外国人が感じた日本の「道徳教育」のすごみ 知らず知らずのうちに道徳心を学んでいる
「若者の頭を教育する際、心の教育を忘れてはならない」と語ったのは世界的に有名なチベットの指導者、ダライ・ラマだ。
現代の子どもたちが、家庭より学校でより長い時間を過ごしていることを考えれば、この考え方は意義深い。実際、米国においても、日本においても、一般の小学生は6~7時間を学校で過ごす。さらに、放課後の活動を加えれば、子どもがどれだけ長い時間を家庭外で過ごしているかわかるだろう。
「道徳教育」日米の違い
確かに、道徳教育の基盤は家庭にあるべきで、道徳を子どもに教える責任は親にある。しかし、子どもが夕方や夜間しか家にいないのに、家庭内の教育だけでこれらの価値観を植え付けられると期待するのは非現実的だ。道徳教育において学校は主要な役割を担っている。そこで、今回は日本と米国で道徳教育にどのような差があるのか考えてみたい。
多くの日本人は道徳教育を受けている。文部科学省は、学校のあらゆる教育活動において「道徳的な心情、判断力、実践、態度などの道徳性を養う」を目的に掲げている。これには秩序、注意深さ、努力、公平性、人間や自然との関係における協調性も含まれている。ガイドラインによると、週に少なくとも1時限は道徳教育に当てられる。
道徳は長らく教科外の「活動」とされてきたが、2018年度から小中学校の「特別の教科」に格上げされる。安倍政権は、2011年に大津市の中学生がいじめを苦に自殺した事件など学校における深刻ないじめ問題を変革の理由に挙げた。これまで教師が作っていた副教材や資料に代わり、標準教科書が使われるほか、教師は生徒一人ひとりの成績を記述し、数値ではなく主観的に評価することになる。
一方の米国はどうか。「Moral(道徳)」の語源はラテン語にあり、人々の規範や習慣、共存するための社会的接着剤を意味する。米国では「人格教育」という言葉に包括して使われている。子どもたちに道徳的、市民的、礼儀的、反いじめ的なスキルを身に付けさせる指導が狙いだ。これにはライフスキル教育、道徳的・倫理的な考え方、問題解決力なども含まれている。つまり、幼い子どもに良い振る舞いや価値観を教えるのである。