外国人が感じた日本の「道徳教育」のすごみ 知らず知らずのうちに道徳心を学んでいる

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米国人の私は、日本の道徳教育には詳しくない。しかし、広島県呉市出身のトモコ・ロシターさんの説明はとても印象的だった。幼少時代を日本で過ごした彼女は、小学生のころ受けた道徳教育をはっきりと覚えているとして、こう話してくれた。

「みんなでテーマを決めて、その週の会長になった人が司会役になった。クラスで嫌われていた女子について話し合った時のことをよく覚えている。自分たちの振る舞いを考え、どうしたら改善できるか話し合った。彼女が立ち上がって『仲間外れにしないで仲間に入れてくれてありがとう』と言ったのをはっきり覚えている」

日本では、学校も教師も自らの信念を押し付けることをせず、日本に昔からある道徳心に従うよう指導する。生徒たちは、さまざまな道徳の授業を通じて、親や年長者を敬ったり、動物に優しく接したり、困っている人を助けたりすることの大切さを学ぶ。ロシターさんも、この経験を通じて「相手の立場に立って考えることの大切さ」を学んだという。彼女にとって学校は、道徳心を学ぶ場だったのである。

日本ならではの優れた「教育」

米国人から見て、日本の教育が優れていると感じる点はもう1つある。それは、掃除や給食当番、魚やウサギ、植物の世話などさまざまな「係」を子どもたちに任せることを通じて、道徳を教えていることだ。こうした活動は単に掃除のスキルなどを身に付けられるだけでなく、仲間と協力し合ったり、責任感を持ったりすることの大切さを学ぶことができる。米国の学校でも、限られた形ではあるが、こうした活動を取り入れようとしているところもある。

両国の道徳や生活技能の教育システムを比べると、日本の指導方法がより効果的なように思われる。米国の学校は日本のアプローチを学ぶべきかもしれない。道徳や価値観は家庭で教えられるべきものだ。しかし、子どもが家庭の外で過ごす時間が増えている中で、学校もこうした教育に力を入れるのは当然のことなのである。

セオドア・ルーズベルト大統領はこう述べている。「長期的に見れば、品性こそが、個人の人生や国家を決定付ける最も大事な要素である」。

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