日本語の問題ですら、点数が取れない!
猛勉強の成果が出て、りりさんはシンガポールの高校に合格する。しかし、学校からは英語力不足を理由に、1学年下のクラスから始めてほしいと言われてしまった。ここで母親のパクさんは、全力で食い下がった。「新学期までの4カ月間、シンガポールで英語を特訓して追いつけるように準備します。だから、学年は落とさず、入学させてほしい」。外資系企業で培った交渉力と真剣さが伝わり、学年を落とさずに入学させることに成功した。
東京では成績優秀だったりりさんも、シンガポールの学校では大変な苦労をした。日本の学校と最も違うことは「とにかくたくさん書かされること」だった。「日本のテストは暗記すればよい点が取れたけれど、シンガポールでは完璧に暗記しても、点数は2割程度しか取れない。母国語の日本語の授業ですら、高得点を取れなかったときは焦りました」。なぜか。
「そもそも、日本の小学校・中学校のテスト問題とシンガポールの高校で求められることが、全然、違った」とりりさんは振り返る。歴史のテストなら暗記で解けるのは全体の1割程度。あとはエッセイで評価される。科学の授業でダイナマイトについて習ったときは、「ダイナマイトが発明されてよかったのか、悪かったのか」をテーマに作文を書かされた。
ビジネスの授業ではケーススタディを読む。日本語のテストでは2000文字前後の論文を書かされた。いずれも、日本で普通に教育を受けていたら、国立大学の2次試験や、大学院で出合うような問題ばかりだ。
りりさんが通ったシンガポールの高校は、国際バカロレアの認定校。国際バカロレアは国際的に認められている大学入学資格のひとつであり、世界142カ国で約3470校が認定されている。日本ではインターナショナルスクールを中心に24校が認定されている(文部科学省のウェブサイトより)。
勉強量はとにかく多い。学校から帰ってきて休憩を取り、夕食後に19~21時まで勉強。試験前になると午前3時まで勉強していることも珍しくなかった。パクさんは1週間に約1回、1時間ほどスカイプで話をして、娘を応援した。最初のうちは「帰りたい」と泣かれてつらい思いもした。
最難関「友達作り」の乗り切り方
留学生活の最大の収穫は「友達」とりりさんは言う。海外で友達を作るのは大人だって大変だ。企業派遣でMBA留学したものの、私生活で打ち解けられる現地の友人ができず、日本人だけで固まってゴルフさんまいだった……というビジネスマンは少なくない。親元を離れた難しい年齢の女の子が、どうやって異国で心を許せる友達に出会ったのか。
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