本連載のテーマは「グローバルキャリア」と「教育」「子育て」だ。読者は子どもの英語教育に関心があるだろう。そんな皆さんに向けて、パクさんは「ぜひ、私の失敗体験をお伝えしたい」と言う。
りりさんが生まれたとき、パクさんは「この子をバイリンガルに育てて、それについて本を書こう」と決意した。言葉が少しずつしゃべれるようになっていくりりさんに、毎日英語で話しかけ、多くの子ども向けの英語ビデオも見せたりした。ところがかけた労力に対して「期待をはるかに下回った」。周りの環境が、すべて日本語の世界だったからだ。日本人の夫との会話も、もちろん日本語だった。娘をバイリンガルに育てることをあきらめた。
「子どもは覚えるのも早いけれど、忘れるのも早い。日本に住んで周囲が日本語環境なら、小さい子どもの英語教育におカネをかけるのは無駄です。やりたければ、いちばん安いグループレッスンとか、スカイプ英会話などをやればいい。
時々、海外旅行に連れて行って、関心を持つきっかけを与えれば充分だと思います。おカネは、子どもが小学校高学年か中学生になり、本人が真剣にやる気になった時のためにとっておいた方がいいですよ」と、パクさんは子どもの将来を不安に思う親たちにアドバイスする。
そんなパクさんが、子どもたちに常々言い聞かせていることがある。「将来、働いておカネを稼ぐようになったら、寄付をしなさい。おカネがなかったら、ボランティアして時間を割きなさい」。ホームレス支援の団体、児童養護施設などに寄付を続けており、思わぬところに、寄付者の名前としてパクさんの名前を見つけることがある。本人はそれを、特別なこととは思っていない。
「金額は多くないけれど、関心のある分野に寄付をしたり、ボランティアをします。アメリカで暮らしていたときは、こういうのは当たり前だったんですよ」。
大事なのは母国語でのコミュニケーション力、そして論理的な思考力。共通言語としての英語は必要だが、幼児の頃からおカネをかけすぎるのは無駄――。自らの失敗体験も率直に教えてくれたパクさんのアドバイスは、実はシンプルで普通のビジネスパーソンにも納得できるものだ。
また、塾が不要なくらい公教育を充実させて、と言うパクさんの訴えは、自分の子どもだけでなく、広く日本に住む子どもたちの幸せを願う親の声として、共感する人が多いだろう。
(撮影:梅谷秀司)
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