ところが、この予想に反して、消費税率引き上げは、なかなか決まらない。主に安倍首相と菅義偉官房長官のお二人らしいのだが、官僚が誘導しようとしている消費税率引き上げに対して、警戒心をお持ちのようだ。経済の先行きをよく見て判断するとして、なかなか決めない。
正直なところ、安倍政権がここまで頑張るとは思っていなかった。安倍ブレーンとされる浜田宏一エール大学名誉教授や、その他の方々の影響力が大きいのかも知れないが、現在最大の権力を持っていると目される財務省に敵対しかねず、消費税率引き上げの先送りの可能性を見せ続けていることは意外だ。
では、消費税率はどうすべきなのか、そして、現実問題としてどうなるのか。
「べき論」としては、消費税は上げるべきでない
筆者は、消費税率について、来年度の引き上げ見送りを判断するのがいいと考えている。その根拠は以下の通りだ。最大の理由は、「増税」である消費税率引き上げが、需要の縮小につながる可能性が大きく、少なくとも余計なリスクであり、デフレ脱却のためのアベノミクスの指向するところに逆行するからだ。
国民が、「増税は遅かれ早かれやって来るものなので、早く行われても消費行動を変えない」といった「超合理的判断」をするので、消費税率引き上げが経済にマイナスの影響を与えない可能性は、理屈上はあるが、そこまで(非現実的なまでに)合理的ではないとすると、消費税率の5%から8%への増税は、景気になにがしかマイナスの影響を及ぼすだろう。
消費税率を巡る議論でよく話題になるのは、1997年の消費税率引き上げの影響だ。結果論からいうと、その後税収が落ち込んだのだ。ただし、この年には、三洋証券と北海道拓殖銀行の破綻、山一證券の自主廃業発表、さらに翌年には日本長期信用銀行の破綻と、日本のバブル崩壊による金融システムの緊張が最も大きくなった時期と重なっていて、この時期の景気の落ち込みが、どの程度消費税率の引き上げによるものなのかは判然としない。
しかし、この時の消費税率引き上げによる「増税」に、景気に対してなにがしかのマイナス効果があった可能性は否定できない。予定されている2014年度の消費税率引き上げにも、景気に対して何らかのマイナス効果が生じる可能性は否定できない。
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