渋澤:日本は地の利を生かして発展してきたと思います。4年前に、経済同友会で「日本の将来ビジョン2045」という提言を行ったとき、「ミトコンドリアとカレーうどん」という題名を考えました。
どういうことかといいますと、ミトコンドリアは、ほとんどすべての生物の細胞に内在しているもので、生命力の源といえますよね。一方、カレーうどんって、よく考えるとめちゃくちゃな食べ物で、インド由来のカレーと中国由来のうどんを和風だしで味付けした料理です。
つまり日本人には、日本という国の独自性を礎にしつつ、海外から入ってくる異分子を生かして、今までになかったものを創り出す力が備わっていると思うのです。ただ、残念ながら今のところ、その能力を生かしきれていない。20年前の日本って、もっといろいろなチャレンジをしていたと思うのですが、今はそのチャレンジ精神が大分後退しているような印象を受けます。ガバナンスは大事なのですが、何か企業がいろいろなものに縛られて、お行儀がよくなりすぎた感もありますね。
デファクトは取れなくても、ニッチトップなら…
中野:1989年に三菱地所が米国のロックフェラーセンターを買収しましたが、あれが日本という国としての高値だったのではないでしょうか。
確かに「和魂洋才」が日本の発展を支えてきたという面は、歴史的にもありましたが、一方で日本オリジナルの技術、商品って、今に至ってもほとんどありませんよね。日本がデファクトを取るには、それこそゼロから何かを生み出す発想力が必要になりますが、そこは非常にハードルが高い。
それに、デファクトを取ろうにも、今の日本では企業規模が世界的に見ても小さすぎます。海外では国境を超えて業界再編が進み、企業は潤沢な資金を開発に回していますが、日本は国内の業界統合すら進んでいません。正直、東芝が今も冷蔵庫をつくっていること自体が、驚きですよ。
渋澤:とはいえ、1番手、2番手ではなく、ニッチトップを目指すという戦略はあるかもしれません。スバルなんて、自動車会社としての規模自体は大したことなく、いろいろな課題があったものの、いまや米国では押しも押されもせぬ人気自動車メーカーですからね。
中野:日経平均株価を見ているだけではわからない、魅力的な日本企業はまだまだあるということですね。6月28日の『会社四季報』活用術のイベントでは、そういう企業の見つけ方などにも触れていきますので、ぜひお越しください。
藤野:繰り返しますが、参加費は無料です。
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