渋澤:とはいえ、資生堂のように創業から140年以上も経っている企業の株価が高値を更新している例もあります。日経平均株価を見ただけではわかりませんが、過去最高益、株価の過去最高値を更新している企業は、結構あります。実際、グローバルに展開している企業は結構元気がいいですよ。
中野:確かに、日経平均株価というマクロの側面からだとわからない部分はありますね。
藤野:日経平均株価に採用する225銘柄を私に選ばせてほしいなぁ。
渋澤:それはいいアイデアですね。
藤野:米国を代表する株価インデックスであるS&P500にしても、ニューヨークダウにしても、それが株式市場のすべてではないということは、はっきりさせておきたいところです。ニューヨークダウなんて、たったの30銘柄ですからね。30銘柄を選ぶという意味では、全体の平均値というよりも、むしろこれは「アクティブインデックス」ですよ。当然、日経平均株価は構成銘柄の中身が問われますし、TOPIXのような時価総額方式のインデックスだと、時価総額の大きな銘柄の株価動向が、インデックスそのものの動きに大きく影響します。
日本企業は「米中のおこぼれで食べていく」と割り切った
中野:3月決算企業の決算が発表され、株主総会も順次開かれていますが、藤野さんとしては今期の決算を見て、何を感じましたか。
藤野:日本企業はしたたかな選択をしたことを実感しました。「米国と中国という巨大な2つの市場のおこぼれで食べていこう」という戦略ですね。
つまり、デファクトスタンダード(事実上の標準)は取らない。なぜなら、デファクトスタンダードを取る競争を始めると、巨額の設備投資が必要になり、高い経営リスクを取らざるをえなくなるからです。なので、そこは米国と中国に任せ、部品や具材を提供していくという戦略を鮮明にしている日本企業が、非常に増えたと思います。
力の上下関係を気にするタイプの方は中国に従うような立場になることについて不満を抱くかもしれませんが、その手の感情論は別にして、とにかく生きていかなければなりません。そう考えると、実は日本って米国と中国の両にらみでビジネスを展開するうえで、地の利があるのですよ。だから、そこで思う存分稼いで、稼いだおカネを介護などの内需に回していくという経済になっていくのではないかと考えています。先日、安倍晋三首相が中国の経済構想である「一帯一路」に協力するという趣旨の発言をしましたが、まさに日本は経済国として生きていくという決意の表れだと解釈しました。よい選択だと思います。ひふみ投信の当面の基本戦略としては、「米中おこぼれ銘柄」と、「内需関連銘柄」で決まりです。
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