歴史は「25年ごと」に考えると見方が変わる 戦後、日本は3つの時代を生きてきた

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ただし、今日の日本が陥り、アジア諸国がこれから陥る問題は、それまでの人口オーナス(重荷)に比べ、変化が大きいこと。短期間での急激な経済成長、寿命の著しい伸びによる高齢化などの理由が加わって、より深刻な問題を生んでいる。

――「時代と世代」は25年単位でとらえられるのですね。

戦後の日本において、「政治」の季節といえる「60年安保」を担った世代の多くは1930年代後半生まれ。彼らより25年後の1960年前後に生まれた子世代は1970年代から1980年代にかけて「文化」の時代を担った。そして、その子世代の1980年代から1990年代にかけて生まれた世代は現在、20代半ばから30代初めにあり、日本経済の厳しい現実を前に、「経済」により大きな関心を向けているように見えるという、それぞれ特徴がある。

長期波動は世代間隔と共振現象を起こす

──同時に長期波動に留意する必要もあると。

吉見俊哉(よしみ しゅんや)/東京大学出版会理事長。1957年生まれ。東大大学院社会学研究科博士課程単位取得後退学。東大副学長、大学総合教育研究センター長などを歴任。専攻は社会学、文化研究、メディア研究。日本における文化社会学の発展で中心的な役割を果たす(撮影:今井康一)

25年はこのような公約数を媒介変数的に世代史と歴史の間に置くことで、ローカル的な世代的記憶と数百年単位の世界の歴史をつなぐことができる。

25年単位のもう1つの根拠として政治経済学的な視点が説得力を持っている。資本主義経済はこれまで約25年の上昇局面と約25年の下降局面を持つ50年周期で循環してきたという「コンドラチェフの波」が裏付けになる。この学説の先見性にいち早く注目し、用語の命名者となったのがヨゼフ・シュンペーターだった。

シュンペーターといえばイノベーション概念で有名だが、日本ではこの概念は過度に技術中心主義的に解釈されている。本来は社会の組み立て方の問題であって、いずれ飽和する運命にあるとの認識に立っていた。50年の周期となれば、革命や戦争、人口変化、国の政策や都市の発展といった諸々の歴史変化に結び付く。「波」は長期になるほど、社会構造そのものと関係してくる。

実際、日本でもさかのぼって明治維新前後からの50年は、ものすごい変化だったし、現代が周期の渦中にある1970年から2020年に同じようなことが起こっているのかもしれない。長期波動は世代間隔と共振現象を起こす。

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