「共謀罪」が一般人にデメリットしかないワケ 怪しいと疑われた瞬間一般市民も対象になる

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「共謀罪」は、一般市民の側からすればデメリットしかない(写真:Toru Hanai/ロイター)
組織的犯罪処罰法改正案に新たに付け加えられる共謀罪、もしくはテロ等準備罪。国会で議論が十分に尽くされたとはいいがたく、その内容は茫漠としている。ただ漂ってくるのは、一般市民が監視される社会の不穏な気配だ。『共謀罪の何が問題か』を書いた京都大学法科大学院の髙山佳奈子教授に問題点を聞いた。

テロに照準を合わせたものが1つもない

──表現がいろいろありますが、共謀罪=テロ等準備罪という認識でOKですか?

はい。

──では、そもそも共謀罪とは。

複数者で犯罪の計画について合意することです。過去3回廃案になり、今回は対象犯罪を半分以下に減らしたうえで、テロ対策であること、また国連の国際組織犯罪防止条約(TOC条約)の締結に不可欠であることを訴えてきました。

ところがそれとは裏腹に、条文の中にテロに照準を合わせたものが1つもない。つまりテロ対策を含んでいない。しかも条約締結のための条件はすでに国内立法で完備され満たされています。日本では70を超える類型の予備・陰謀罪、準備罪、扇動罪が規定されていて、諸外国と比べても広い処罰範囲を持っている。単なる観念的な危険だけでは処罰できず、被害の発生やその科学的危険性を根拠とし、既遂・未遂・予備と処罰する体系が確立されているわけです。

そもそもTOC条約自体マフィア対策であり、ターゲットはマフィアが公権力に対し不当な影響力を行使しようとする行為や、組織的な経済犯罪。同条約締結のために共謀罪もしくはテロ等準備罪を立法する根拠はありません。

──共謀罪の対象犯罪の中身は?

関係ないものが多い。その選別にはかなり疑問がある。重く処罰される企業犯罪、公権力の私物化や警察などによる職権濫用・暴行陵虐罪、民間の汚職を含む経済犯罪などが除外され、政治家、警察、大企業に有利な感があります。

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