新たな時代の扉を開くのは誰か?——。エースが駆ける箱根駅伝"花の2区"、近年の変化《加速する記録更新の流れ》

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箱根2区
第101回箱根駅伝、往路2区を疾走する創価大の吉田響選手。13人抜きの日本人歴代最速となる区間新記録(区間2位)の走りを見せた(写真:SportsPressJP/アフロ)
毎年1月2日・3日に開催される箱根駅伝は、年始の風物詩として多くの人々に親しまれている。各チームがタスキをつないで217.1kmを駆け抜ける姿には、毎年大きな注目が集まる。
その中でも2区はエースが揃う特別な区間だ。前半は下り基調の平坦なコースでスピード勝負に。後半には権太坂、ラスト3キロメートルには細かなアップ&ダウンが続き、最後には「戸塚の壁」と呼ばれる難所が待ち構える。山の5区・6区とは異なる過酷さがあり、エースが揃う「花の2区」と言われる。この2区を走るとはどういうことなのか。スポーツジャーナリスト・佐藤俊氏の著書『箱根2区』より一部を抜粋し、そのリアルに迫る。

「花の2区」を走る重み

「花の2区」——。

いつから、なぜ、そのように呼ばれるようになったのか。

起源には諸説あるが、おもな理由は各校のエースが集う区間であること。地形的にもっとも難しいコースで、箱根駅伝の戦略上、非常に大きな意味をもつからだ。

1区は、各校ともスピードランナーをそろえ、お互いを意識し、牽制して走る。佐藤悠基(東海大学:SGホールディングス)や吉居大和(中央大学:トヨタ)、吉居駿恭(中央大学)のように単独で集団から抜けていくケースはともかく、多くは集団走でレースが展開する。

長さ443.7メートルの六郷橋をキッカケにレースが動き、ラストスパートの競り合いで各校が鶴見中継所に僅差で入ってくる。そこで序盤の流れを引き寄せるために、2区が非常に重要になってくる。

「序盤の流れが箱根の結果に反映される」そう語ったのは、駒澤大学陸上競技部の藤田敦史監督だが、この“流れ”が駅伝では、勝つための重要なファクターになる。

その流れをつくることができるのは、エースしかいない。エースで差を開き、あるいは縮める。優勝、あるいはシード権獲得を狙うチームにとっては、ただの1区間ではない。

神奈川大学前監督の大後(だいご)栄治が、「箱根駅伝の全10区間の貢献割合を100%にすると、理論上では各区間は10%ずつ。でも、2区と5区は、それぞれ20%以上の貢献度をもつ」と語るくらい駅伝の肝になる区間だ。箱根駅伝という物語の起承転結でいえば、2区は起承で、転の5区に繫ぐ重要なパーツだ。

2区の距離は長く、地形的にも複雑なコースを走る。第82回大会で、小田原中継所の場所が変更になる前まではもっとも長い23.1キロメートル区間であり、第93回大会で往路の小田原中継所が変更になり、5区、6区の距離が変更になってからは2区が再度、最長区間になった。

保土ケ谷駅まではほとんど平坦だが、権太坂と戸塚中継所手前の急勾配があるため、走りづらく、非常に難しい区間でもある。法政大学で指揮を執る坪田智夫はこう語る。

「2区はごまかしがきかない。1年間、積み上げてこないとダメで、直前で調子が良くなった選手では絶対に戦えない。総合的な走力が必要で、マラソンを走れるくらいのレベルの選手じゃないと2区の攻略は難しく、区間賞は獲れないと思います」

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