「共謀罪」が一般人にデメリットしかないワケ 怪しいと疑われた瞬間一般市民も対象になる

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高山 佳奈子(たかやま かなこ)/1968年生まれ。東京大学法学部卒業、同大学院法学政治学研究科修士課程修了。同助手、成城大学法学部助教授、京都大学大学院法学研究科助教授を経て現職。専門は刑法の基礎理論、経済刑法、国際刑法。日本刑法学会理事、ほか幅広い役職を務める(撮影:今井康一)

──今回の共謀罪法案は、準備罪や予備罪より前の段階での処罰が可能になるわけですね。「内心の処罰」という言葉も出ました。

これまで日本はそこまでしていなかった。憲法の解釈として処罰規定を適用するためには危険が実質的に認められる場合である必要がある、と最高裁が判断している。想像上の危険、観念的な危険ではなく、実質的な危険、現実的な危険がなければならない。だからおよそ「計画を立てた」だけではダメで、それが実際に実行される危険がある場合だけ適用できるという考え方だったんですね。

だけど今般の共謀罪は違います。犯罪の計画はまだ皆の頭の中で内容を共有してるだけだし、「実行準備行為」と呼ばれる要件も単に資金や物品を手配するとか、ある場所を下見に行くだけで該当する。

──実行準備行為というのは、初めて導入された概念ですね。

ええ、国会でもビールや弁当を持ってれば「花見」だけど、地図と双眼鏡を持ってたら「現場の下見」か、って議論があったんですが(笑)。普通、どこへ行こうと自由な行為ですけど、それがまさに含まれるのが今回の法案なんです。

怪しい疑われたら、もはや一般人ではない

──共謀罪の対象は「組織的犯罪集団」としています。一般市民は関係ないんですよね?

いやいや、無限定です。すべての集団がある時点で組織的犯罪集団と疑われたら、その瞬間から適用されます。警察の恣意的な判断で摘発できる。

たとえば、合唱サークルが楽譜の違法コピーを計画していると疑われるケース。著作権法も共謀罪の対象ですから。ライバルチームが「あそこは過去に違法コピーをした」と通報すると、次もきっとやるのではと疑われる。実際にしていなくても虚偽の通報をすれば、それで十分捜査する要件になる。つまり一般人もやっぱり対象に入るといわざるをえない。疑われたらもはや一般人じゃないという論法ですね。

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