シェアリングエコノミーをGDPでどう扱うか 政府の統計改革における注目点の1つに
日本では、米国や中国ほどの勢いは見られない。一般社団法人シェアリングエコノミー協会の上田祐司代表理事は「(1)既存業種に関する法規制が厳格であること、(2)既存のサービスのレベルが高いこと、(3)モノやスキルを他人と共有することに消極的な文化が一部にあること」が、日本のシェアリングビジネスの発展を阻んできた要因だと指摘する。民泊での騒音など、近隣住民とのトラブルにも注目が集まりやすい。
ただ、2016年に行われた政府の「シェアリングエコノミー検討会議」を経て、今年6月1日には悪質な事業者を排除する自主ルールと認証制度が、シェアリングエコノミー協会により初めて導入された。3日には全国で民泊を解禁する住宅宿泊事業法案が衆議院本会議で可決され、今国会での成立が図られている。日本でも徐々に、シェアリングエコノミーの普及に向けた体制作りが進みそうだ。実際、矢野経済研究所の調べでは、2015年度の国内市場規模は285億円(サービス提供事業者売上高ベース、前年度比22.4%増)と伸びている。
GDPは減るのか増えるのか
シェアリングエコノミーのビジネスモデルは、サービスの提供者が住宅、運搬、物品、金融などのサービスを利用者に提供し、利用者がその料金を支払い、さらにマッチングを行う仲介事業者に、提供者・利用者が一定の手数料を支払う、というのが一般的だ。
レンタカーや貸し駐車場など、類似のレンタル業は従来、存在していたが、あくまでも企業が中心となって顧客にモノ・サービスを提供するビジネスモデルが主だった。シェアリングエコノミーではとりわけ、多数の提供者と多数の消費者が、インターネット上で瞬時にマッチングされ、柔軟な取引を行える点が従来と異なる。さらに民泊などでは、提供者と消費者が相互に入れ替わることもある。
こうした新しいビジネスモデルに基づく経済活動を、現状のGDP統計で正確に把握できるだろうか。シェアリングエコノミーでは1つのモノを複数の人の間で何度も共有するため、新品のモノは今ほど売れなくなる可能性がある。これは個人消費の縮小につながり、GDPにはマイナスだ。
GDPは定義上、国内で新たに生み出された付加価値を示すので、中古のモノの売買自体は含まない。しかし、仲介業者が受け取る手数料はGDPにカウントされるし、中古のモノを利用してサービスを提供すれば対価はGDPにカウントされる。
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