日本男児よ、「昭和の経営者」の心意気を学べ 「信長の棺」の人気作家が現代の経営者に提言

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こんなふうに、「なぜ」と考えるところから歴史を見ていくというやり方でビジネス書も歴史小説もつくっていくのが、僕の流儀なんです。

「仕事の中に人生を入れるな」

――日本経済の歴史から見たとき、なぜ、昭和の企業経営と今の企業経営とは、このように変わってしまったのでしょう?

今だからわかるんですが、あの頃の会社は日本流で経営していたんですね。ほんわりとした、心の部分を大事にする経営です。「従業員のために」とか、「お客さんのために」とか、会社が何のためにあるのかを見失わない経営です。そんな日本流が忘れられていって、アメリカ流の資本主義になっていったのだと思うんです。

いや、強欲資本主義という意味では、今の日本の会社はアメリカ流よりもひどいかもしれない。キリスト教社会であるアメリカでは、成功者は必ずと言っていいほど多額の寄付をします。そうしないと、死んだ後に天国へ行けないから。

でも、日本はキリスト教圏ではなく、企業や金持ちが多額の寄付をする社会ではありません。だから、儲かればいいんだ、得をすればいいんだという欲に、歯止めがかからない。

つまり、昭和の経営にはあった「心の部分」がなくなってしまうと、日本企業の欲望を止めるものがなくなり、資本主義の行き過ぎが目に余るようになっているんです。

たとえば、戦前の財閥系の大企業では大卒の新入社員と経営トップの給料の差はせいぜい100倍でした。戦後はもっと差がなくなり、たとえば僕のいた中小企業金融公庫の大卒初任給が1万円で、総裁の給料は25万円だったから25倍です。

ところが、今の企業ではもっと差があります。日産のゴーンさんだといちばん下の社員の約500倍ももらう。日本人の経営者でもそんな人がいます。この格差は大きすぎる。資本主義の行き過ぎではないでしょうかね。

為替の変動で儲けたり、コメや小麦の先物相場で儲けたり、場合によってはこれにも資本主義の行き過ぎがあるんじゃないでしょうか。貨幣なんて国の行き方にかかわるものなのに、儲け本位で何でもやっていいはずがないでしょう。米や小麦だってそうです。人間の基本となる食料なんですから、単なる儲けの道具として扱っていいわけがない。

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