日本男児よ、「昭和の経営者」の心意気を学べ 「信長の棺」の人気作家が現代の経営者に提言

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――実際に昭和の経営者たちを振り返ってみて、感じられたことはありましたでしょうか。

加藤 廣(かとう ひろし)/小説家。昭和5年(1930)東京生まれ。東京大学法学部卒業。中小企業金融公庫に入庫し、貸付・審査関係を経て山形支店長、京都支店長、調査部長などを歴任。51歳で退職後、山一證券経済研究所顧問、埼玉大学経済学部講師などを務める。経営コンサルタントとして中小企業の育成にも奔走。 平成17年(2005)に作家デビュー。デビュー作となる小説『信長の棺』は、当時の小泉純一郎総理が愛読書として挙げたこともあり大ベストセラーに。『秀吉の枷』『明智左馬助の恋』と合わせた本能寺三部作は、合計200万部を超す名作として多くの読者の支持を受けている(撮影:尾形 文繁)

あらためて感じたのは、本当に、日本という国は大企業がリードする社会になってしまったんだなということでしたね。中小企業の心意気というか、信念というか、そういうものは失われつつあるんだなと、感じたんですよ。本書に出てくる企業にも、その後、大企業になっているケースがいくつもあるんです。それが頼もしい一方で、寂しい面もある。

成功は確かに立派なんです。けれど、なかには、成功の過程で、共感できないやり方をするようになった人もいます。それが寂しいんです。

あの頃の日本には、今のような大企業は少なかった。もっとささやかな規模の中小企業ばかりでした。その代わり、心を込めて働き、頑なに信念を貫いている会社ばかりでした。本書に出てくる会社にも、いまだに大企業化を拒んでいるところがあります。昭和の日本の企業にあったよさとは、そうした心の部分だったのではないかと、改めて感じたんですね。

中小企業が全国展開して大企業になり、世界へと打って出てグローバル企業になるという具合に、会社の規模をどんどん大きくしていく。そのこと自体が悪いとは言いません。

けれど、いつの間にか、心を置き忘れてはいないか。やみくもに会社の成長を追っているうちに、何のために働くんだ、誰のために働くんだという、会社の信念というか、理念がないがしろになってしまうのだとしたら、会社の成長なんて意味がないじゃありませんか。

それは、ただの欲だけです。僕は「強欲資本主義」と呼ぶんですけれどね。

いちばん昭和らしいと感じる経営者は?

――なるほど、昭和の企業のような心を今は日本経済全体が見失っているかもしれません。では、今回の本の中で、先生にとっていちばん、昭和らしいと感じる経営者は誰でしょうか。

いちばん好きなのは、未来工業(第13章)の山田昭男社長ですね。「自分のところで働いた人たちが日本一幸せだと思えるような経営をしたい」と言っていました。それを実現するために、裏方に徹していた。それでいて、決して無理をするのではなく、好き勝手な生き方を貫いた人です。去年、亡くなったけれど、ああいう生き方がいちばん好きですね。

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