「小林カツ代」人気再燃は何を意味するのか 没後3年、レシピ本やエッセー本が続々発売

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2005年にくも膜下出血で倒れてからメディアから離れ、2014年に亡くなった小林カツ代氏がいまだに愛される理由とは(撮影:風間仁一郎)

没後3年、時短料理で一世を風靡した料理研究家、小林カツ代の関連本出版が相次いでいる。昨年には『小林カツ代の永久不滅レシピ101』や『小林カツ代のおかず道場』などレシピ本が発売されたほか、今年に入ってからも1月に『小林カツ代伝』、4月には未発表原稿などが掲載された『小林カツ代の日常茶飯 食の思想』が発売された。私自身、2015年に『小林カツ代と栗原はるみ 料理研究家とその時代』という本を上梓している。2人の有名料理研究家を軸に料理研究家史を描いた立場から、今回のブームを分析したい。

なぜ、小林カツ代が今、また注目されているのか。その前に、通常、テレビや雑誌、レシピ本などで人気を博す料理研究家は、本人とともにレシピも忘れられやすことを指摘したい。これには3つ理由がある。

1つは、レシピの奥には考案者の思想や生き方、好みなどが隠されていること。万人のものとして活用されるレシピは、同時にとても個人的なものでもある。素材の使い方、調理法などその人ならではの料理や、語り口調などの伝え方が、ファンを引き寄せる。タレント性と切り離せないがゆえに、本人が出なくなると忘れられるのは仕方がない側面もある。

料理や食材にも流行がある

2つ目は、レシピにも旬があること。使われる食材や調味料だけでなく、調理道具にもトレンドがあり、次々と新しいものが登場する。新しい道具や食材を使いこなすための提案を行うのも、料理研究家の仕事である。

3つ目は、料理自体にも流行があること。高度成長期には洋食が、昭和後期には本格中華やイタリアンがはやり、平成の初めの1990年代はエスニックがはやった。共働き時代の今は、省力化が大きなポイントになっている。どんどん時代が変わる中、昔のレシピに注目を集めるには、誰かが新しい解釈やアレンジを施さなければならない。かくして、レシピの世界は栄枯盛衰が激しくなる。

世に料理研究家はたくさんいる。栗原はるみ、辰巳芳子に城戸崎愛、鈴木登紀子、有元葉子らのベテラン。コウケンテツ、土井善晴、飛田和緒、長尾智子、細川亜衣、藤井恵らの中堅、ブロガー出身者もいる。それぞれが独自性のあるレシピを提案し、メディアで活躍している。料理番組はいくつもあるし、レシピ本の出版も盛んだ。

テレビ放送が始まって以来、日本にはいつでも、人気の料理研究家たちがいた。次々と新しい人が登場するうえ、料理のトレンドの移り変わりが激しいこともあって、亡くなった人が忘れられるのも早い。昭和に大人気だった江上トミ、飯田深雪、土井勝、王馬煕純、田村魚菜らは、若い世代は名前も聞いたことがないかもしれない。

2005年8月にくも膜下出血で倒れてメディアに出なくなり、2014年1月に亡くなった小林は、とっくに忘れられていてもおかしくなかった。再び脚光を浴びる理由を探るには、彼女自身の特質を知る必要がある。

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