イクメンになるとは「二軍落ちする」事なのか 短時間で生産性向上など、普通の男にはムリ

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一方で、業績悪化などで余剰人員が発生するような場合を除いて、男性社員には働き方を変えずに定年まで勤め上げることを期待しがちです。だから、タケオさんが業務量の少ない部署への異動を希望しても、上司に「花形部署には戻って来られなくなる」と説得されたわけです。

もし、タケオさんが上司の期待に応える形で仕事でも責任を果たそうとすれば、成果を落とさずに労働時間を減らさなければなりません。確かに世間では、「子育てを経験して、効率的に仕事ができるようになり、以前よりも生産性が上がりました」と涼しげな表情で語るイクメン像が流布しています。ですが、普通の父親、イクメンになぞらえて言うならば、「フツメン」にこうした働き方ができるとは思えません。

働く時間が減れば、当然、その分だけ成果は落ちます。育児で責任を果たす以上、これまで男性に求められてきた業務量をこなし、同じだけの成果を上げるのは無理です。フルタイムの共働きが増えつつある現在、フツメンにできる仕事と家庭の両立とは何かを考えることが求められています。

難しいのは、上司は自分の培ってきた「常識」に基づき、タケオさんのためを思って、アドバイスをしてくれている点です。意識的なハラスメントとは違って、悪意はありません。むしろ善意です。

そうは言っても、育児時間を確保できなくなる点で実害がありますし、本人に自覚がなくても、「男性だから」という理由で家庭よりも仕事を重視するべきという価値観を押しつけることは、今後、より問題視されるようになるでしょう。

育児中の男性にも配慮すべき時代になってきた

厚生労働省は、平成29年1月1日に施行される改正男女雇用機会均等法と改正育児・介護休業法に対応したマニュアルを作成しています。「育児休業の取得について上司に相談したところ、『男のくせに育児休業をとるなんてあり得ない』と言われ、取得をあきらめざるを得ない状況になっている」。そのマニュアルの中で、このような男性に対する言動が、「制度等の利用への嫌がらせ型」の典型例として取り上げられています。男性社員に対しても、妻の妊娠、出産、そして、育児に関して仕事上の配慮が必要になっているのです。

現代のように変化のスピードが速い時代には、若い頃に身に付けた「常識」が、あっという間に「非常識」になってしまいます。決してひとごとではなく、新しい知識を身に付けて「常識」をアップデートし続けなければ、誰でも「時代遅れ」になり、意図せずに他人に迷惑をかける危険性があります。

これからの時代は、子育て世代に限らず、性別や年齢、あるいは既婚未婚を問わず、すべての社員にとって働きやすい職場づくりを目指すべきですが、そのために必要なのは「学び」の機会なのです。

とはいえ、日々の仕事に追われる会社員が、勉強時間を確保するのは困難です。多くの社員を巻き込んでとなればなおさらでしょう。そこで、2017年2月から始まったばかりなのに、わずか数カ月ですでに影が薄くなってしまっているプレミアムフライデーに目をつけたいと思います。

どうせ休みとして定着しないのであれば、最終金曜日の夕方を研修や勉強会の時間に充てることを提案してみてはいかがでしょうか。業務を離れて、物事を考える時間になりますし、職場の人たちの仕事以外の顔も見えてきます。

即効性という面では、「育児をとるか、出世や仕事のやりがいをとるか、二者択一を迫られている」と感じている仲間が見つかれば肩の力が抜けるはずですし、気の長い話になってしまいますが、こうした悩みを根本的に解決していくためには、社員が積極的に自分たちの職場環境の改善について取り組みを続けるしかありません。

読者の皆様から田中先生へのお悩みを募集します。「男であることがしんどい!」「”男は○○であるべき”と言われているけれど、どうして?」などなど、“男であること”にまつわるお悩み・疑問がある方はこちらまでどうぞ。相談者の性別は問いません。
田中 俊之 大妻女子大学人間関係学部准教授

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たなか としゆき / Toshiyuki Tanaka

1975年生まれ。2008年博士号(社会学)取得。武蔵大学・学習院大学・東京女子大学等非常勤講師、武蔵大学社会学部助教、大正大学心理社会学部准教授を経て、2022年より現職。男性学の第一人者として、新聞、雑誌、ラジオ、ネットメディア等で活躍している。

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