イクメンになるとは「二軍落ちする」事なのか 短時間で生産性向上など、普通の男にはムリ

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国立社会保障・人口問題研究所『第15回 出生動向基本調査 夫婦調査の結果概要』2016年によると、1985〜1989年には、妊娠前から無職が35.5%、出産退職が37.3%で、出産後に職場復帰するのは育休なし・ありを合わせて24.1%にすぎませんでした。妊娠前から無職の女性がこれだけいるのですから、この時代には、まだ「妻になること」と「家事に専念すること」が強く結びついていたと考えられます。昭和の終わり頃には、「寿退社」さえ死語ではなかったのです。

ただ、2005〜2010年の数字を見ると、妊娠前から無職は24.0%に下がった一方で、出産退職が42.8%まで増えています。合計で70%近くの女性が、第1子出産までに仕事を辞めていました。平成が20年経過してからも、「母になること」は、「育児に専念すること」と関係していました。

平成の世でも「男は仕事、女は家庭」が続いてきた

大きな変化があったのは、2010〜2014年の5年間です。出産をきっかけに退職する女性は、33.9%に減少し、育休あり・なしの合計で就業継続が38.3%まで増加しています。女性活躍推進の流れを踏まえれば、2015〜2019年の5年間では、出産後も働き続ける女性がさらに増えると予想されます。

「男は仕事、女は家庭」という性別役割分業は、しばしば「昭和じゃあるまいし」と批判されます。しかし、個人的な感覚や時代の風潮で物事を評価するのは危険です。データ上は、平成になってからも、性別による分業は継続されていたと判断するのが妥当です。フルタイムの共働きは、あくまで、将来的に主流になっていくスタイルとして理解する必要があります。

実際に、夫婦共に正社員で働こうとすれば、妻が専業主婦やパート勤務の家庭と異なり、夫が仕事の時間を減らして、育児を分担しなければなりません。そうは言っても、現状では、男性の働き方は、週5日40時間は「最低限」で、それ以上が「普通」に求められており、定時にすら帰れない父親がほとんどです。男性の育児参加は、まさに「言うは易く行うは難し」で、共働き世帯の母親には過剰な負担がのしかかっています。

タケオさんの場合、奥様の職場復帰に合わせて短時間勤務制度を利用されています。これは父親として、現実の変化に意識と行動を合わせられているということです。育児の責任は十分に果たしていると言えます。ご自分の選択に自信を持ってください。

1980年代後半から2000年代にかけて、女性の7割程度が、結婚、妊娠、そして、出産のいずれかをきっかけに退職していました。こうした経緯があるので、今現在管理職に就いている世代の男性は、“女性社員は定年まで働かない”という認識で接する傾向があると考えられます。

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