「お泊まりデートをするようになったら、いつのまにか食事代は私が出して、ホテル代は彼が出すというパターンが定着してしまったんですね」
会社を終えて、金曜の夜に会う。そんなに高いお店に行くわけではないが、お酒を飲むことが好きなふたりは、会計が毎回1万円前後になっていたという。ワインをボトルで頼んだり、焼き肉に行ったりすると1万円を超えてしまっていた。年収370万円で一人暮らしをしている女性が、1回の食事代に1万円を使うのは、けっこう痛い出費だった。
「ホテル代は彼が払っていたというけれど、どんなクラスのホテルに泊まっていたの?」
「ごく普通のビジネスホテルです。彼がネット予約をしてホテル代をカード決済しているから、いくら払っているかわからないんですけど、ホテル代より食事代のほうが高いときもあったんじゃないかと思います」
さらにそのホテル代の支払いの仕方に、佳恵は不信感を抱いていた。
「ホテルって、ネット予約をすると安くなりますよね。あと、これは私の想像ですけど、ツインをシングルユースで予約していたんじゃないかって」
「どういうこと?」
「ツインを2人で予約するよりも、1人で泊まると申告して予約したほうが、部屋代が安くなるホテルがあるんですよ」
なぜそう思ったかというと、お泊まりデートの日は、ホテルにまず彼がひとりでチェックインし、それから待ち合わせの場所に来るからだ。
「それから、泊まった日の朝は、決まってこう言うんですよね。『今度佳恵の家に行きたいな。こうやって毎回ホテル代を出すのも、もったいないじゃない』って。私、そう言われる度に気持ちが引いていました。ホテル代を出すのが本当は惜しいんだなって思って」
金銭感覚の違いを思い知らされた“出来事”
そして、「この人とは、金銭感覚が違う」という、決定的な出来事が起こった。
ふたりが出会ってから3カ月目の記念日のことだった。特別な日なので、彼が都内にある、いつもよりも値段の高いシティホテルを予約していた。
夕方チェックインして、まずは2人で部屋に行き、荷物を置いて外に夕食を食べに行くことになった。佳恵が外に出る身支度をしていると拓也が言った。
「俺、財布、持っていかなくていいよね」
その言葉を聞いて、カチンときた。記念日の食事も私に出させる気なのか。そこで、とっさにこう返した。
「貴重品は、ホテルに置きっ放しにしないで、持っていったほうがいいんじゃないの?」
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