「駅まで歩いていくのに、2件のコンビニを通ったんですね。『おカネ下ろしてくるから待ってて。借りた1万円返すね』という言葉を期待していたんですけど、彼はその前を素通りしました」
帰りの電車の中で、もう拓也とは別れようと思った。
「財布の中身が空っぽになると、気持ちまで空っぽになるんですね」
さらに、佳恵は言った。
「彼は、私の何倍も年収がある。それなのに私に対等な金額のおカネを毎回出させる。私って、そんなにおカネを払う価値がない女ですか?」
これは、佳恵に価値があるかないかの話ではない。彼の金銭感覚が佳恵とは違うのだ。おそらく彼に悪気はない。女性がいくら稼いでいるからというよりも、女性と付き合うときは、おカネは対等に出し合うのが当たり前だと思っているのだろう。
「ええ、おカネに対する考え方がまったく違うんですよ。お泊まりデートをまだしていなかった頃は、食事代が割り勘だったんです。彼はおいしいものを食べるのが大好きだから、食べログなどで評判の店に行く。すると2人で食事をして1万5000円くらいかかる。それを割り勘で払うんです。それなら私は、2人で7000~8000円で済む安い居酒屋さんでいいから、彼にごちそうしてほしかった。
相手への思いやりが支払いにも関係する?
以前の「仲人はミタ」で、私の会員の祐一(44)が成婚した話を書いた(「結婚するとは『運命共同体』を結成することだ」)。
彼は、妻の幸枝と真剣交際に入る前に、彼女も入れて3人の女性と交際をしていた。36歳、38歳、41歳だが、最終的に選んだのが41歳の幸枝だった。36歳はかわいい系、38歳は美人系、41歳の幸枝は地味で普通の容姿だったのに。
ここにも女性たちそれぞれの金銭感覚の違いが表れていた。
36歳のかわいこちゃんは最初のデートで食事をし終えた時、「あの、お勘定は?」と聞いてきたものの、「ここは大丈夫ですよ」と言うと、それっきり食事をしてもお茶をしてもいっさいお財布を開かなくなった。
38歳の美人は食事を終えると、「おいくらですか?」と出そうとする。「ここは大丈夫です」と言うと、「じゃあ、次のお茶は私にごちそうさせてください」と言って、お茶代を彼女が払ってくれるようになった。
幸枝は食事を終えて、会計の段になると必ず合計金額の半額に近い千円札を出してきた。「大丈夫ですよ」と断っても、毎回千円札を出してくる。そのうち彼もそれに甘えるようになって、6対4くらいの女子割で千円札をもらうようになった。
そして3人の女性の中で幸枝だけが次回のデートの時に、「この間はごちそうさまでした」と、お菓子やお茶などの小さなプレゼントを持ってきてくれたのだという。
祐一の年収は、420万円で、拓也のような1千万円プレーヤーではない。この3人と結婚したときのことをイメージしたら、41歳の幸枝が、経済観念もしっかりしていて、自分をいちばん大事にし、支えてくれるように感じたという。
結局、相手への思いやりはおカネの支払いにもつながるのではないか。“ホテル代は自分が払うから、食事代は佳恵が出す”という拓也の考え方は、それを割り勘デートと考えるなら間違っていなかったかもしれない。しかし、もう一歩踏み込んで、“一人暮らしをしている女性が、毎回1万円を超える食事代を負担するのはつらいだろう”と考えてあげる優しさがあったら、もっと安いお店で食事をしただろうし、たまにはごちそうをしただろう。そして、ふたりの関係も終わることはなかったのではないか。
男女の付き合いの中で、男がすべて奢るのか、割り勘にするのかは、人によって考え方がさまざまだ。ただ、おカネの払い方や使い方というのは、そこにその人の性格や考え方がそのまま出てしまう。金銭感覚が違う相手との結婚は、どちらかがよほど譲歩しないかぎりは難しい。
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