「リーガルデザイン」は世界をどう変えるのか

法律のグレーゾーンはビジョンで乗り越えよ

「法律は考え方次第で、イノベーションを加速させる手段になる」と語る水野祐弁護士(撮影: 田所千代美)
「法律のグレーゾーン」という言葉に、どのようなイメージを抱くだろうか。狡猾(こうかつ)に抜け道を突く、やや反社会的な印象を持つ人も多いかもしれない。しかし、法律は過去に生じた事実をもとに作られていくから、新しく出現したものに対応することには不向きだ。一人一台、誰でも瞬時に情報を共有し、テクノロジーの進化も著しい現代では、法律は時代に取り残されていくことがますます増えていく。
では、新しいビジネスや表現は、法律による規制で足を引っ張られても仕方ないのか。これに異を唱えるのが『法のデザイン』の著者、水野祐弁護士だ。法律と現実の間に、大きなグレーゾーンが広がっている現状をネガティブに捉えることはしない。法律は、その解釈に対する考え方次第で、ビジネスや表現を加速させられる手段になりえるという。水野氏が提唱する「リーガルデザイン」について、話を聞いた。

「リーガルデザイン」とはどのような考えか

――書籍のタイトルにもなっていますが、提唱されている「リーガルデザイン」とはどのような考えでしょうか?

法の機能を単なる規制ととらえるのではなく、社会をドライブしていくための「潤滑油」としてとらえる考え方です。法律や契約といった法には、私たちの行動を規制する、というネガティブなイメージが強いかもしれませんが、柔軟な思考で主体的に設計していけば、自分たちが実現したいことを促進し、イノベーションを加速させるツールにもなりえます。

新しいサービスやクリエーションを世に広めていく際に、うまく広がっていくための滑走路を作っていくようなイメージです。企業法務の仕事でいうと、「予防法務」と「紛争解決」に分けられるのが一般的ですが、リーガルデザインの主戦場は予防法務よりさらに以前の「戦略法務」にあたる部分になります。

かつては、社会全体を見通して全体の制度設計をする人がいて、法律をどんと作り、それですべてをマネージするというボトムダウン型のガバナンスが主流でした。しかし、現代の高度情報化社会においては、歴史上かつてなかったほどに現実と法律との乖離、すなわち法律的な「グレーゾーン」が広がっていて、法の解釈や運用に生じる「余白」や「ゆらぎ」をクリエーティブに解釈する余地も、かつてないほど広がっています。

法律だけではガバナンスがうまくいかないことは明らかで、法という手段を使うのか、違う手段を使うのか、国がパターナリスティックに介入するのか、業界の自主的なガイドラインに委ねるのか等々、とても難易度が高い時代に突入しています。

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