トランプ政権に批判的な米メディアや民主党議員の間では、大統領を罷免する弾劾論も出始めている。ミュラー特別検察官の追及がどこまで行くか。「第2のウォーターゲート」「ロシアゲート」という大統領弾劾追及まで行くのか。
現段階では、捜査対象はロシア政府とトランプ陣営のスタッフがどう関与したか、ということであり、トランプ氏は捜査対象にはなっていない。その点では、弾劾が確実だったので、自ら辞任を選んだリチャード・ニクソン元大統領や、首の皮一枚でしのいだビル・クリントン元大統領のときの、過去の弾劾事案とは違う。トランプ大統領の関与は間接的であり、ダメージは軽いといえる。ただ、トランプ大統領にとって、政治的プレッシャーが大きいことは間違いない。
議会の追及からは逃れられる可能性
もう1つ、ロシア絡みの第2の疑惑について、議会が調査、追及を始めようとしていたのは、トランプ大統領がロシアのセルゲイ・ラブロフ外相との会談で、イスラム過激派組織「イスラム国」(ISIS)について、機密情報を同盟国の許可を得ずに漏洩したという疑惑だ。
ニューヨークタイムズ紙によると、その機密情報はイスラエルが米国に提供したものだという。イスラエル情報当局は米メディアに対して、情報提供国と調整せずに情報共有することは、極めて不適切として、トランプ氏の行動に激しい怒りを表しているというのだ。
米議会は、このトランプ氏の漏洩疑惑の調査に乗り出そうとしていた。トランプ政権はその疑惑を全面的に否定し、その証拠もないと主張している。ただ、メディアがいろいろ報じている疑惑問題を議会としても放置できない。議会には調査権限がある。
ところが、今回、ミュラー特別検察官が任命されたことによって事情が変わった。ロシア政府との癒着疑惑やロシア外相への機密漏洩疑惑について、政治的には、独立機関である特別検察官のミュラー氏の肩越しに調査がしにくくなりだした。
つまり、ミュラー氏が直接相手にするのは「トランプ陣営のスタッフたち」であり、ミュラー氏が特別検察官に選ばれる前に比べると、皮肉なことに、ISIS絡みの機密漏洩疑惑で「トランプ氏自身」を狙っていた議会の調査、追及は弱くなる可能性が出てきた。トランプ大統領にとっては、ひと安心といったところだ。
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