とはいえ、トランプ大統領がかなり深刻な窮地に追い込まれていることは間違いない。その窮地を脱するために、トランプ大統領の脳裏をかすめているに違いない鮮烈な記憶は、ほかでもない、4月6~7日の米中首脳会談最中に決断したシリアへの攻撃だ。それは中国の習近平国家主席への強烈なメッセージとなった。
すなわち、北朝鮮の核放棄への圧力に狙いを定めた、シリア空軍基地へのミサイル攻撃という軍事力行使は、アメリカ国内でも評価され、トランプ政権への支持率は高まった。同時に、北朝鮮の暴発によって引き起こされるかもしれない、米軍の先制攻撃の可能性も高まった。
この北朝鮮カードは、トランプ大統領にとって、ピンチを脱する大逆転のチャンスになる可能性がある。場合によっては2020年の再選を目指すこともできるかもしれない。
これまで北朝鮮問題は中国の習主席を仲介として取り組んできた。ところが、ロシア絡みの問題が出てきて、このまま中国に肩入れしたままではらちが明かない。中国だけでなく、ロシアとの協力で北朝鮮に立ち向かう。
トランプ大統領自身が直面している窮地を脱し、しかも、米議会を黙らせ、押さえ付けることができるような離れ業とはいったい何か。おそらく、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領を仲介として、北朝鮮の金正恩労働党委員長とトップ会談を実現させることではないか。
トランプ大統領の「ウルトラC」戦略
トランプ大統領は昨年の選挙戦中から、金正恩委員長との直談判したいようなことを何度も言っていた。「ハンバーガーを食べながらおしゃべりしてもいい」とか、「金委員長がアメリカに来るなら受け入れる」とか。
大統領に就任してからも、最近では4月30日の米CBSテレビの番組で、金委員長のことを「なかなかの切れ者」と持ち上げてみたり、5月1日には、「適切な状況下で会えれば、光栄だ」と語った、とBBCが伝えている。
その適切な状況下とは、どういう状況か。ベストな状況とは、北朝鮮が中国ないしロシアの仲介によって、核・ミサイル開発を凍結するなど、大きな譲歩を決断するような状況だろう。その意向を金委員長がトランプ大統領とのトップ会談で示せることができれば、それこそトランプ氏にとってベストシナリオだ。
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