「アメリカファースト(米国優先)」「米国をもう一度偉大な国に!」――高らかにそう宣言したのが、ドナルド・トランプ第45代米国大統領だ。
「まさか」といわれた当選から2カ月半。虚実入り交じった情報をツイッターで発信するトランプ氏は、客観的な事実・真実を重要視しない「ポスト・トゥルース(ポスト真実)」時代の申し子といえる。そんなトランプ氏自身が「フェイクニュース(偽ニュース)」と呼ぶ、通称「怪しい調査書」が注目を集めている。
トランプ氏とロシア政府の深い関係をつづったA4サイズの文書のトップには「極秘」とある。書き手は英情報機関の元スパイのクリストファー・スティール氏である。
信憑性に疑問を挟む関係者は少なくないが、後述するように米情報機関幹部らがその概要について1月上旬、オバマ大統領(当時)やトランプ氏に説明したところを見ると、「まったくのウソ」として無視するわけにもいかない。これはいったい、どのような調査書なのか。まずはその全容を見ていこう。
「怪しい調査書」に書かれていること
話は約1年前にさかのぼる。2016年初め、米共和党の反トランプ勢力が関連する調査会社「フュージョンGPS」は、元スパイのスティール氏に対し、トランプ氏とロシアとのつながりについて調査を委託した。
スティール氏は海外での情報活動をする「MI6」にかつて勤務しており、ロシア事情に詳しい。同氏の会社「オービス・ビジネス・インテリジェンス」が、早速調査を開始した。
当初は共和党内の反トランプ勢力が資金を提供していたものの、予備選挙が終わりトランプ氏が大統領選の共和党候補となると、ある民主党支持者が調査資金を出すようになった。つまり、反トランプ派の要請による調査報告書ということだ。
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