調査が一通り終了したのは、昨年半ば。英ガーディアン紙の調査によると、夏ごろ、スティール氏は米連邦捜査局(FBI)に調査書を持っていったようだ。「内容があまりにも深刻で影響力が大きく、自分だけが所持しているわけにはいかなかったため」と12日付の同紙は分析している。
その後、スティール氏は、米ウェブサイト「マザー・ジョーンズ」に調査内容の一部をリークする(10月31日付で報道)。FBIが何らかの行動を起こすと思っていたところ、何もなかったことがきっかけだった。
このときまでに米ニューヨーク・タイムズ、ハフィントンポスト、英BBC、フィナンシャル・タイムズ、ガーディアンなどの大手メディアは調査書の存在を知っており情報を閲読する機会を得たメディアもあったが、事実関係の確認が難しく、報道を見送っていた。
11月8日、大統領選でトランプ氏が勝利した。10日後、共和党のマケイン上院議員がカナダで開催された会議に出席中、駐ロシアの英大使から疑惑情報を得た。後に情報源の1人に連絡をつけ、調査書の内容を聞いた。マケイン議員は調査書の真偽について判断できなかったため、12月上旬、FBIのコミー長官と1対1の会合を持った。
そして年明けの1月上旬、情報機関幹部らがオバマ大統領、トランプ次期大統領、議会指導部の8人に対し、調査書を2ページにまとめた概略を渡した。
10日、米CNNが調査書の存在を報道し、広く知られることになった。その数時間後、ニュースサイト「バズフィード」が35ページにわたる調査書(12月中旬までを調査対象としたアップデート版)のコピー全文をウェブサイト上に公開した。そして、その翌日、トランプ氏は当選後初の記者会見で、この2社を口汚くののしった。
情報源はロシア内の情報関係者
調査書の調査対象期間は昨年6月から12月。情報源はロシア内の情報機関関係者だ。18項目に分かれており、最初の項目「米大統領選:共和党候補ドナルド・トランプ氏のロシアでの活動およびクレムリン(注:ロシア政府)との不名誉な関係」には、「少なくとも過去5年間、ロシア政府はトランプ氏との関係を深め、支援し、補助してきた」と書かれている。これは「プーチン大統領が是認した」もので、目的は「西側を分裂、分割させることである」。
トランプ氏は「クレムリンとの関係を深めるための賄賂となる不動産取引には応じていない」が、同氏とその側近はクレムリンとの情報交換を定期的に続けることに「応じた」という。
ロシア連邦保安庁(FSB)はトランプ氏が2013年にミス・ユニバースのイベントに出席するためにモスクワを訪れた際、同氏が評判をおとしめるような行為に及んだことを知っており、この情報で同氏を「脅迫する」に足る、と見ていた。
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