一方で、この調査書は、米政府が作成したロシアの対米サイバー攻撃についての機密報告書(「最近の米選挙におけるロシアの活動とその目的の分析」)を補完する存在となったようだ。
昨年10月以来、米政府はロシアが大統領選の妨害を目的としてサイバー攻撃を行ったり、民主党のメールを流出させたりした、と結論づけており、12月にはロシアに対する新たな制裁措置を発動させた。そして1月6日には、米大統領選へのロシアのサイバー攻撃の影響を分析する報告書を発表している。
機密情報を含めたオリジナル版がオバマ氏、トランプ氏、情報機関関係者に配られ、機密情報を取り去ったバージョンが国家情報長官室のウェブサイト上に一般公開された。
報告書は、実際にサイバー攻撃が大統領選の結果を左右したかどうかについては、判断を下していない。
専門家の見方は?
調査書の信憑性と米ロ関係の行方を専門家はどう見ているのか。ロシアや東欧事情について詳しい政治アナリストのフィル・バトラー氏は、筆者の取材に対して次のように話す。
「調査文書はトランプ氏の信頼を落とすための策略だったと思う。米国の大手リベラルメディアさえも掲載しようとはしなかったし、米国の情報機関の専門家の多くも偽物だと見なした。タカ派のマケイン上院議員が情報拡散のために動いた点からも、軍事産業やネオコンによる中傷行為だったことがわかる」
王立国際問題研究所「チャタムハウス」が発行する『ワールド・トゥデイ』誌のアラン・フィルプス編集長は、内容の真偽は分からないという。調査文書の事実関係は「メディアが探り当てることができる情報の範囲を超えている」。同氏はロイター通信社のモスクワ特派員として20年近くロシアに駐在した後、保守系高級紙デイリー・テレグラフの外信部長として働いた経験がある。
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