ドナルド・トランプ氏が1月20日、米国の第45代大統領に就任する。世界は平等な主権国家から構成されているはずだが、図抜けた影響力を持つ米国はやはり特別だ。大統領就任式典には世界中の人々が注目する。だが、今回の式典でも、以前と同様に華やかで厳粛で、かつ米国らしいリラックスした気分を味わえるか。就任式典には似つかわしくない、一種の不安感が付きまとう。
大統領選挙期間中の発言、ツイッターでの発信、さらに、1月11日に行った新大統領として初の記者会見での発言などによって、トランプ氏の主張はかなり明確になっている。「偉大な米国を回復する」ことを目標として掲げ、米国企業を活性化し、雇用を作り出すことを重視する。外国企業が第三国で製造した製品には高い関税を課すなど保護主義的措置もいとわない。不法入国の外国人は米国人から雇用を奪っていると批判、これを排除すると言っている。
いわば自己中心的であり、その発言は、「挑発、攻撃、自慢」と言われるとおりだ。攻撃する相手の物まねをしてからかうことも辞さない。
なぜかプーチンを擁護する真意
浮上した閣僚の候補も、トランプ氏と同様の主張の人たちである。議会での承認審査の際、一部の閣僚候補は発言を修正しているが、新政権はトランプ氏の主張どおりの方向に進み出すだろう。
問題は政治や安全保障、経済など多方面にわたっているが、中でもサイバー攻撃とそれに関連して浮かび上がった、ロシアとの関係に垣間見られるトランプ氏の姿勢は、深刻な問題である。新大統領就任というめでたいときに不吉なことを言うようだが、懸念を今書き記しておくことは無益でない。
周知のごとく、オバマ米大統領は2016年の12月29日、ロシアによる米国へのサイバー攻撃に対する報復として、ロシアの情報機関幹部4人に対して制裁を科し、米国に駐在するロシアの当局者35人を国外退去処分にする、などの措置を発表した。
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