大躍進「東ソー」、不振だった塩ビ復活のなぜ 営業利益「初の1000億円突破」の牽引役に

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環境規制や原料の石炭価格上昇によって、カーバイド法を採用する中国塩ビメーカーの整理・淘汰が本当に進むのかどうか。進むとすれば、どの程度まで過剰設備が解消されるのか。その見極めがつくまでは、塩ビでの投資は現有設備の効率化に重点を置く。この先どんな展開になっても対応できるよう、今はコスト競争力に磨きをかけ、しっかりと足場を固めることが大事だ。

機能製品で安定的に稼ぐ

――会社の基本戦略として、非汎用の機能製品の強化を掲げています。

免疫診断装置は機能製品の柱の一つ。消耗品の試薬で安定的に稼ぐビジネスモデルだ(写真:東ソー)

昨年度は高級歯科材料のジルコニア、自動車排ガス触媒用途の合成ゼオライト、半導体製造プロセス用の石英ガラスなどが好調だった。当社は機能製品部門でバイオサイエンス事業も手掛ける。病院向けの免疫診断装置・試薬、企業の研究部門などで使用される計測機器・充填剤が柱で、収益の貢献度も大きい。

こうした機能製品部門で年間300億円以上の利益を出せる力はついてきた。汎用品の塩ビや石油化学はどうしても市況によって収益が振れやすく、中国などアジア勢との差別化も難しい。技術力で勝負でき、安定的な収益が見込める機能製品の強化に投資を優先的に振り向け、外部環境の変化に打たれ強い収益構造を確立したい。

――機能製品での具体的な投資案件は?

山本寿宣(やまもと としのり)/1955年生まれ。1979年入社。化学品事業部長、クロル・アルカリセクター長などを経て、2016年3月から現職(撮影:梅谷秀司)

歯科材料のジルコニアは昨年秋に能力を増強した。合成ゼオライトはマレーシアの新工場が近く稼働するほか、国内も高性能グレード品の生産能力を引き上げる。バイオ医薬品原料の精製工程で使用される分離精製剤も生産設備を増設中だ。このほかにも期待できる事業が数多くあるので、それらの設備投資や研究開発に戦略的に資金を投じていく。

――日本の大手化学メーカーはいずれも汎用品から機能製品へのシフト戦略を進めています。そこにリスクはないのでしょうか。

市況次第の汎用品と違い、高い付加価値を得られるのが機能製品の魅力。ただし、当然のごとく技術の競争があり、ライバルがすごい製品を出してきたら、シェアを奪われかねない。極端に言えば、何らかの技術革新でその機能自体が不要になってしまう可能性だってある。そこが機能製品の恐いところだ。

機能製品にも事業としてのリスクがあるわけで、汎用品と機能製品の双方で強い事業を有するハイブリッド型のポートフォリオが理想的だと思う。当社は汎用市況品のクロル・アルカリや石油化学の事業もしっかりやりつつ、機能製品部門の強化・拡大を図っていく。汎用品も地道に頑張っていれば、今回の塩ビのように強い追い風が吹く時だってある。

渡辺 清治 東洋経済 記者
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