三菱ケミカルのお手本は「スリーエム」だった 日本最大の化学会社トップが語る成長戦略

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伝統ある三菱の化学系事業会社3社が合併し、「三菱ケミカル」としていよいよ動き出した。単一企業としても規模は国内化学業界の断トツで、世界でも上位に入る。(写真:三菱ケミカル)
三菱ケミカルホールディングス(HD)傘下の化学系3社が4月1日付で合併し、三菱ケミカルが発足した。統合新会社の売上高は2.7兆円、従業員数は4万人を超え、単一企業としても国内で断トツの規模を誇る総合化学メーカーになった。
上流の石油化学基礎品から、液晶・半導体やリチウム電池などの材料まで手掛ける「三菱化学」。食品包装や工業用の高機能フィルムが主力の「三菱樹脂」。アクリル樹脂・原料の世界首位で、先端軽量素材の炭素繊維複合材なども展開する「三菱レイヨン」ーー。
これまで三菱ケミカルHDの化学系事業は、これらの有力3社を傘下に抱えながらも収益性の低さが指摘されてきた。「2010年に三菱レイヨンを買収し、(1+1+1が)4にも5にもなると期待したが、3社の間にある壁を壊せなかった」とHD役員は振り返る。
そうした現実に経営陣は危機感を募らせ、一昨年に3社合併を決断。1年以上の準備期間を経て4月、グループの化学系事業を一手に担う三菱ケミカルが始動した。この巨大な統合新会社をどう舵取りするのか。持株会社のトップで、直々に新会社の陣頭指揮も執る越智仁社長に聞いた。

自力で成長事業を作り出す

ーーあらためて、化学系3社の合併に踏み切った意図を聞かせて下さい。

持ち株会社がグリップを効かせて、(三菱化学の伝統的な)石油化学部門の汎用市況品を中心に構造改革を進めてきた。複数の赤字製品から撤退し、大きな損失を出して全体の足を引っ張るような事業はなくなった。ようやく業績に安定感も出てきた。しかし、次に成長と高収益性を目指そうとした時に、従来の体制では限界がある。

世界経済が停滞する中、私たちは自力で成長事業を作り出していく必要がある。先進国を中心に、お客さんのニーズもより高度なものになっている。今までのように3社がバラバラに戦っていてはダメだ。1つの会社になって力を結集して競争に勝ち抜き、高い成長性と収益性の両方を手に入れる。

ーー従来の体制では、特にどういった点に限界を感じていたのですか。

化学、樹脂、レイヨンの3社は、いずれも非常に深い技術を有する会社だった。しかし、グループとして、それを最大限に有効に活用できていたとは言い難い。各社の技術が有機的に結びついて横に発展するということができていなかった。

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