三菱ケミカルのお手本は「スリーエム」だった 日本最大の化学会社トップが語る成長戦略

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もちろん、これまでも3社が協力し合って新たな技術、製品を開発するよう号令をかけてはきたが、「会社が違うので機密情報は出せない」とか、「開発の権利や利益はどちらが取るのか」といった問題が現場で出てきて、なかなかものごとが前に進まなかった。スピードが求められる今の時代、そんなことでは競争に勝てない。

統合新会社で一番期待しているのは技術の融合だ。3社が培ってきた材料や加工の技術を融合し、パフォーマンスに優れた素材・材料をスピード感をもって市場に出していく。研究開発も3社間の重複が解消され、効率が上がる。また、販売チャネルがまとまることで、先々の商売につながる有益な情報も集まりやすくなる。

マーケット単位で事業を再編成

ーー3社合併のシナジーを早期に発揮することが求められます。

越智仁(おち ひとし)/1952年生まれ。1977年、三菱化成工業(後の三菱化学)入社。三菱化学経営企画室長などを経て、2012年三菱レイヨン社長。2015年から三菱ケミカルHD社長。今年4月から三菱ケミカル社長を兼任(撮影:今 祥雄)

そのために組織編成に工夫を凝らした。旧3社のビジネスユニットは合計すると60近くもあったが、それを半分以下に集約したうえで、10の事業部門に編成した。編成に当たっては、マーケットが重なるユニットはなるべく同じ部門にまとめ、関連事業が一体となって戦える体制を組んだ。

高機能フィルムを例に取ると、旧三菱樹脂の時代には全フィルム製品を一つの部門が取りまとめていた。新会社では食品包装や工業用などを高機能フィルム部門として編成し、液晶用は抜き出して、半導体・ディスプレー材料を扱う部門と一緒にした。三菱化学の子会社だった日本合成化学工業についても、同じ基準でフィルム事業を分け、それぞれの部門に編成した。

マーケット単位の事業編成により、「最終製品がどういった方向性に進化し、それに伴って、素材・材料へのニーズがどう変わっていくのか」といった視点から業界を俯瞰できるようになる。研究開発の戦略も立てやすくなり、市場の技術革新への対応力も増す。

ーー医薬品や産業ガスを除いた化学系事業だけ見ると、売上高営業利益率は5%(2015年度実績)にとどまっています。3社合併で収益力をどこまで引き上げられますか。

今の実力値は、営業利益で年間1300億~1400億円。技術融合による新製品創出に加え、旧3社の顧客基盤を活用した一体営業にも力を入れる。そうした“協奏“や統合による効率化で500億円規模のシナジー効果を出し、2020年度には新会社の営業利益を2000億円にまで増やしたい。それぐらいの力はあると思うし、何としても実現しないといけない。

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