「炭素繊維」、大本命の車向けで勝つのは誰だ 帝人と三菱レイヨン、王者・東レを追撃なるか
帝人の2017年は大型買収とともに幕を開けた。自動車用の部品成形メーカー、米コンチネンタル・ストラクチュアル・プラスチックス(CSP)社の買収手続きが年初に完了。買収には800億円以上を投じた。
CSPは軽量なガラス繊維強化プラスチック(ガラス繊維と樹脂などを混ぜた複合材料)の成形・加工を得意とし、同材料を用いたフードやフェンダーといった自動車外板部品を製造。年間売上高はおよそ700億円で、ゼネラル・モーターズをはじめとする米ビッグスリーや北米トヨタなどと直接の取引関係がある。
炭素繊維を自動車業界に売り込む
帝人は高機能複合材料を将来の経営の柱と位置づけ、特に自動車用途の強化を急いでいる。今回の買収の狙いは二つあり、一つは自動車外板に適したガラス繊維強化プラスチック分野への本格進出。そしてもう一つが、CSPの販路と成形技術を活用して、帝人が得意とする炭素繊維複合材を自動車業界に売り込むことだ。
年初の買収会見で帝人の鈴木純社長は、「これで自動車業界への強力なプラットフォームが構築できた。2社の技術を融合し、車体部品の軽量化ニーズに応えていく」と強調。米国に炭素繊維の工場も建設し、2025年までに自動車関連の複合材料で年間15億ドル(約1700億円)の売上高を目指すという。
実は、CSPに最初に触手を伸ばしたのは、帝人と炭素繊維で競合関係にある三菱レイヨンだった。米国の自動車業界に有力な販路を築くため、三菱レイヨンがCSPに提携を打診。2016年内に合弁会社を立ち上げる合意を交わしたが、帝人によるCSP買収が決まり、ご破算になった。
その三菱レイヨンは新たな提携先を探す一方、日米で炭素繊維工場を増強。独企業から米国内の余剰設備も買い取り、2017年中に年産能力を従来比4割増の1.4万トンに引き上げる。三菱レイヨンの福居雄一取締役は、「自動車向けを牽引役として、2020年度には炭素繊維関連の売上高を1000億円の大台に乗せたい」と意気込む。
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