魔法瓶サーモス、知られざる高収益の舞台裏 携帯マグボトルの市場創出、次なる挑戦は?
通勤・通学の途中や休憩時、かばんからステンレス製の“マイボトル”を取り出し、朝出がけに入れておいた温かいコーヒーや紅茶で一息つくーー。これからの寒い季節、こんな光景をあちこちで数多く見かけるはずだ。
外筒と内筒の間を真空にする真空断熱魔法びん構造によって、熱い飲み物は熱いまま、冷たい飲み物は冷たいまま長時間保てる、ステレンレス製の携帯飲料ボトル。直接口をつけて飲むので、マグボトルとも呼ばれる。
それを持ち歩く生活スタイルを日本に定着させたのが、ステンレス製魔法びんメーカーのサーモス(東京港区、中條啓一郎社長)だ。
携帯ボトルは当初、さっぱり売れなかった
サーモスは、保温・保冷機能に優れたステンレス製の水筒・飲料ボトルやランチジャーなどを世界120カ国以上で販売。特に日本市場では販売が好調で、国内売上高が過去4年連続して2ケタ成長。前2015年度の国内売上高は200億円を突破し、5年前のほぼ倍に。その原動力となったのが、同社の看板商品である携帯マグボトル(商品名は「ケータイマグ」)だ。
初代ケータイマグの発売は今から17年前の1999年。当時、すでに米国では、ステレンレス製魔法びんのボトルにたっぷりのコーヒーを入れて、車での通勤途中やオフィスで直接飲むスタイルが普及し始めていた。
が、日本では発売当初、さっぱり売れなかった。家にあるお茶やコーヒーをボトルに入れて出先で飲めば経済的だが、「そのためにわざわざ水筒みたいなボトルを持ち歩くのは貧乏くさい」と思われたからだ。また、コップを使わず、ボトルに直接口をつけて飲むスタイルに抵抗を感じる消費者も多かった。
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