産業ガス大手2社、こんなに違うM&A戦略

大陽日酸とエア・ウォーター、それぞれの道

 製造業に欠かせない各種産業ガス。業界大手の2社は国内需要が頭打ちとなる中、いずれもM&Aで業績を伸ばしている

鉄を作るには高炉内の燃焼温度を高める高純度酸素が欠かせない。食品の酸化防止や半導体の製造プロセスには窒素、自動車の薄板熔接には希ガスのアルゴンなどが使用される。こうした製造業用の各種ガスは産業ガスと呼ばれ、国内最大手が大陽日酸、2位はエア・ウォーターだ。

産業ガス業界は1990年代から2000年代前半にかけて合従連衡が進み、大陽日酸(母体は日本酸素、大陽酸素、東洋酸素)、エア・ウォーター(母体は共同酸素、大同酸素、ほくさん)の2大企業が誕生。医療用途も含めた国内シェアは2社合計で7割に及ぶ。しかし、製造業の海外移転が進み、国内の産業ガス市場は頭打ちに。そこで両社はいずれも新たな収益柱を育てるためにM&A戦略を推し進め、相次ぐ企業買収をテコに業績を伸ばし続けている。

と、ここまでは同じだが、両社のM&Aには大きな違いがある。どういった企業を買収するのか。この点において2社の戦略はまったく異なるのだ。

海外で産業ガスの買収を進める大陽日酸

大陽日酸によるM&Aは、海外の産業ガス分野が対象だ。同社は今年6月、産業ガスの世界最大手、仏エア・リキード社から、米国における産業ガス事業の一部を買収すると発表した。買収金額は600億円以上で、大陽日酸にとって過去最大のM&A案件となる。

エア・リキードは米国同業大手の買収を決めており、特に東・中西部ではシェアが極端に高くなる。そのため、米国連邦取引委員会から同地域での事業を譲渡するよう求められ、大陽日酸が取得することになった。産業ガスの基幹設備である18基のASU(空気から酸素、窒素、アルゴンを取り出す分離装置)をはじめ、関連する従業員や顧客との納入契約も引き継ぐ。

大陽日酸は昨年度までの過去10年間で25件以上のM&Aを実施し、買収に費やした金額は約2200億円に上る。そのほとんどが米国、アジアの産業ガス企業で、特に米国では過去10年で15社、この5年間だけで9社を買った。

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