産業ガス大手2社、こんなに違うM&A戦略 大陽日酸とエア・ウォーター、それぞれの道

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一方、エア・ウォーターのM&Aは、国内事業の多角化がキーワードだ。昨年までの10年間で約600億円を投じ、50件以上のM&Aや出資を行ってきた。対象業種はエネルギー、化学品、製塩会社など多岐にわたるが、中でも「食品」と「医療関連」を戦略領域に位置付けている。

同社は2002年、牛肉偽装問題で解散に追い込まれたハム・ソ-セージ会社、雪印食品の北海道工場を買い取り、食品分野へ本格進出。2012年には関東で知名度が高い相模ハムの全株式を取得し、旧雪印食品を母体とする春雪さぶーる(札幌市)と統合。さらに今年7月下旬、日清製粉グループのハム・ソーセージ会社、大山ハム(鳥取県)の買収契約も締結した。

2012年に買収したトミイチは、北海道で多くの大規模農家と栽培契約を締結。馬鈴薯は有名ポテトチップメーカーにも納めている

農産品の流通、加工会社の買収にも力を注ぐ。2012年に北海道で馬鈴薯、カボチャなど野菜の集荷・卸売りを主力とするトミイチ、さらには同じ北海道の冷凍野菜メーカー、林屋グループを買収。昨年は百貨店や駅ビルを中心に90店舗を展開する野菜・果物小売店、九州屋(東京都)を傘下に収め、川下分野にも進出した。今年の8月1日には、マルハニチロ北日本から冷凍野菜などを手掛ける十勝工場を取得した。

景気の影響を受けにくく、安定度が高い

食品分野と並ぶM&Aのターゲットが医療関連だ。具体的には、川崎重工業の子会社だった医療装置・機器メーカーの川重防災を2007年に買収。その後も2010年に手術室や集中治療室の設計・工事会社、美和医療電機(愛知県)を、2013年には伊藤忠商事から病院内で使用する物品の物流管理会社をそれぞれ買収した。昨年は北陸の医療機器商社も買っている。

医療関連分野でも買収戦略を進めるエア・ウォーター。医療用ガスだけでなく、手術室の設計・工事、医療装置、機器などにも事業領域を広げた

もともとエア・ウォーターは医療用酸素の国内最大手で、多くの医療機関と長年の取引関係がある。M&Aで事業領域を広げ、医療用酸素の取引ルートを活用して、病院にかかわるさまざまなニーズを取り込む戦略だ。

経営企画担当の白井清司専務取締役は、「医療や食品は、人間が生きていくうえで絶対に必要なもの。伸びる余地があるし、いずれの業種も景気の影響を受けにくいので業績の安定度が高い」と話す。前2016年3月期決算を見ると、農産・食品と医療関連の合計売上高は2100億円で、営業益でも116億円を稼いだ。

次ページ逆の戦略だが、両社とも成長
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