住友化学の好業績、ニワトリが支えていた! 世界で脚光浴びる「メチオニン」とは?
総合化学の大手、住友化学のある事業が「収益性」と「成長性」の両面でにわかに注目を集めている。同社の前2016年3月期の連結業績は営業利益が1550億円と前の期より2割強増え、過去最高を更新した模様。その原動力となったのが、これまであまり話題になることがなかった“メチオニン”事業だ。
メチオニンは鶏や豚、牛など家畜の成長に不可欠な栄養素。リジンやスレオニンなどと並ぶ必須アミノ酸の一種で、主に鶏用の飼料添加物として使用されている。飼料に少量混ぜて与えることで鶏の生育が早まるほか、鶏肉や卵の品質向上、さらには糞と一緒に排出される有害な窒素が減る環境対策効果もある。
需要旺盛で市況高、原料安も追い風
中国やアジアなど新興国を中心に鶏肉の消費が拡大し、飼料用メチオニンの需要は急拡大している。これまで鶏用の飼料添加物には、同成分を多く含むイワシなどの魚粉が多く使用されてきたが、漁獲量の減少や中国の食用魚需要などで魚粉の価格が高騰。このため、石油由来のメチオニンに切り替える動きが広がり、市場規模はこの1、2年で年間100万トンの大台を突破した。
住友化学は1950年代に医薬品用途でメチオニンの製造を開始し、1960年代から飼料用途へと進出した。世界シェアは1割強と4位で、現在の生産能力は年間14万トン。全量を愛媛工場(新居浜市)で生産し、その大半は中国、東南アジアなど海外の飼料メーカーに輸出している。
「足元の事業・収益環境は非常にいい。でき過ぎと言ってもいいくらい」。健康・農業関連分野を統括する西本麗・専務執行役員はこう話す。好調な需要を背景にメチオニン市況は1キロ=4ドル前後と高値で安定推移しているうえ、昨今の原油相場下落によって、原料コストは大幅に下がっているからだ。
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