「儲からない」農業企業が絶対気づかない視点 今春から参入加速、頭を使わなきゃ勝てない
「どうせ、2~3年も続かないだろう。すぐにここを出て行くことになるよ」
熊本の農家Aさんは、この春から農業への参入で地元にやってくる予定のB社に対して冷ややかです。Aさんが農業に従事している地方に限りませんが、全国でこれまでも多くの企業が農業に参入しながら、数年で撤退に追い込まれた例は枚挙にいとまがありません。Aさんの厳しい発言は、そんな現実を知っているからこそです。
約1500社――。2009年に農地法が一部改正されて約6年で、新たに農業へ参入した企業の数です。農林水産省によれば、旧制度下における農業への参入企業数は約7年で436社にすぎませんでしたが、2015年6月末には1898社に達し、5年前の4倍以上に成長しました。
戦後初の農地法改定で、それまでの「農家の農家による農家のための農業」の時代から、誰でも農業にかかわることができるような「パブリックな農業」の時代へと大転換しました。そして、「農業は儲かる」と踏んで、この世界に入ってくる企業が激増してきたのです。
企業の農業参入がさらに加速
その企業の農業参入が、今年4月からさらに加速する見込みです。農地法のさらなる改正により、これまで農業を始めようとする企業にとって足かせとなっていた農業事業における議決権要件、役員の農作業従事要件などが大幅に「見直し」されます。
具体的には、今までは議決権の4分の1以下だった構成員に占める農業者以外の割合が、同2分の1未満まで認められます。さらに、これまでは役員、理事等の過半数の者が省令規定日数以上まで農作業に従事しなければなりませんでしたが、この条件を満たす者が1人以上でいいようになります。
とはいえ、そのブームに乗っかって農業への参入を企てているB社を、Aさんが懐疑的に見ているように、農業に参入するには農業技術や土づくりなど「農」のスキルが必要で、実際に新規農業に参入した企業でも成功している企業はあまり聞かないのが実情です。
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