住友化学の好業績、ニワトリが支えていた! 世界で脚光浴びる「メチオニン」とは?

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焦点は、その後の供給体制をどうするか。同社はメチオニン事業を今後の戦略強化分野の1つと位置づけ、2020年をメドに世界シェア2割奪取を目標に掲げる。目標実現には、最低でも年産10万トン超の新たな大型プラントを立ち上げ、生産能力を現状の倍近くにまで引き上げることが不可欠。そのために必要な設備投資は400億~500億円規模に上る見込みで、巨額投資に踏み切るかどうかを社内で議論している最中だ。

「メチオニンの需要はこれから先も間違いなく増えていく。供給能力の拡大は大きな課題で、最低でも(年産)10万トン級、できればそれ以上の製造設備を新たに作りたい」と西本専務執行役員。ただ、意欲は満々だが、まだ最終決定には至っていない。「投資金額が大きいだけに、さまざまなリスクを考えながら、慎重にタイミングを見極めている」のだという。

ライバルが相次ぎ増産、需給悪化懸念も

不安材料はライバルの動向だ。最大手の独エボニックは昨年末、シンガポール第2工場(年産能力19万トン、2019年稼働予定)の建設を決定。同社は2014年秋に新工場をシンガポールで立ち上げたばかりだが、早くも次の大型投資に踏み切る。2位の米ノーバスも2020年までに年産能力を10万トン以上拡大する方向で検討している。

また、新たなライバルも出現した。韓国のCJ第一製糖が化学メーカーの仏アルケマと手を組み、メチオニン市場に参入。独自の醗酵法による生産工場を昨年稼働させ、今後の事業拡大に強い意欲を見せている。

成長市場ゆえに、各社がシェア拡大へと競って能力増強に走るのは当然のこと。その結果、業界全体の供給能力が短期間に膨れ上がれば、成長市場といえども需給が悪化して市況が大きく崩れる可能性がある。住友化学が投資決定を持ち越しているのも、そうしたライバル増産による市況悪化リスクを危惧しているからだ。

ただし、今のままでは供給能力拡大に走る上位勢との差が開き、シェア2割の目標実現どころか、市場における住友化学の存在感が薄れてしまう。しかも、メチオニンは装置産業だけに、生産規模の差はコスト競争力の差にも直結する。

新プラント立ち上げには4年以上かかるため、目標に掲げる「2020年のシェア2割実現」のためには、早急に投資を決断する必要がある。成長市場のメチオニンで世界大手の一角に残るために投資へと踏み切るか、それとも回収リスクを恐れて大型投資はひとまず棚上げするか。住友化学にとって、難しい判断となりそうだ。

渡辺 清治 東洋経済 記者
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