『経済統合の新世紀』をこのほど書いた国際貿易投資研究所の畠山襄理事長は、中国の環太平洋経済連携協定(TPP)入りは“確定的”になったと主張する。日本の自由貿易を推し進めてきた立役者でもある同氏に、その理由などを聞いた。
日本も米国も中国の経済連携のゴールは同じ
──TPPの内容には大いに不満なご様子ですね。
まったくがっかりだ。もともとTPPはシンガポール、ブルネイ、チリ、ニュージーランドの4カ国の経済連携協定(P4)として始まった。いわばこの清純な乙女の園に日本と米国がTPPという名で入り込み、貿易の自由化とはこんなものとしてしまった。
本来なら、これを機会に純粋な乙女の力をばねにして日本は農業改革をやるべきだった。ところが、政府の発表文の冒頭に、農産物5項目が国家貿易品目であるとある。恥ずかしげもなく。この自由化の世の中に、「コメ、国家貿易品目である。麦、国家貿易品目である。牛・豚肉、国家貿易品目である」などと書いてあるのと同じだ。
──中国は入りやすくなった?
中国にとってTPP入りは「高嶺の花」だった。包括的経済連携構想(RCEP=アールセップ)といったもので代替しようかと、迷っていたところへ今回の形のTPPが自ら飛び込んできた。中国もまんざらでない。米国は安全保障第一の国だからセンシティブな問題となるが、貿易は第2の問題の位置づけであって、今まで豹変は常套手段でもある。オープンなのはいいことだとか言って、中国を歓迎することになるのだろう。
実は日本も米国も中国も経済連携のゴールは同じだ。成長センターとして期待が持てるアジア太平洋経済協力(APEC)の自由貿易協定(FTA)に参加する(アジア太平洋自由貿易圏=FTAAP)のが目指すゴールなのだ。TPPもRCEPも、そのためのツール。中国がRCEPで走るのはいいが、TPPランナーではいけないとしたところで、ゴールに中国がいることには変わりがない。
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