遅れてきた中国がTPP加盟で本当に狙うもの 中国にとって「飛び道具」となる可能性も

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──中国にとってまんざらでもないのですね。

畠山襄(たけやま・のぼる)/1936年生まれ。東京大学法学部を卒業。通商産業省(現経済産業省)に入省。鈴木善幸内閣時代に内閣総理大臣秘書官、その後貿易局 長、基礎産業局長、通商政策局長などを歴任後、1991年から通商産業審議官として通商交渉を担当。退官後、日本貿易振興会理事長、国際経済交流財団会長を歴 任。

中国の企業も国際企業が続出してきた。暴れん坊の中国企業にしても、たとえばインドネシアやマレーシアで活躍するには「場のルール」に従わなければならない。今は両国の独自なルール下にあっても、TPPが発効されれば両国ともそのルールに従う。その場で中国企業だけがうちのルールでと言うわけにいかない。いずれTPPのルールに従うなら、早くから作る側に回らなければ損だ。だから早めに入ろうとなるのではないか。加えて、今まで受け入れられないだろうと予測されていた中身が、ハードルが低くなり越えやすいものになった。

──この内容には古巣の経産省も一役買ったのでは。

哲学なき交渉になって、けっこう苦労があったらしい。結局、米国の自動車関税が最後まで問題だった。官邸の指図が入った。経産省が即時撤廃から降りたのは、撤廃まで25年というのはいかにもおかしいが、税率が2・5%と大したことがなく、まなじりを決して闘うことか、という判断になった。この部分は確かに経産省が仕切ったようだ。

TPPが消費者の利益になるのかは疑問

──この本の全体の印象はアンチ外務省ですが。

別に外務省を非難しているわけではない。バランスを取るために外務省OBを評価するエピソードもコラムで入れておいた。対外経済政策には論理というものがある。必要なときには悪者になる勇気を持たないといけない。

──対外経済政策の論理?

対外経済政策は本来、消費者あるいは需要家の利益のために行われるのであって、製造業者の利益のためにではない。ところが、GATTにしてからが、製造業者の利益に偏している。たとえば、その物資が緊急不可欠なものである場合には短期的な輸出規制を行っていい、と麗々しく書いてある。それに対して輸入の規制は例外的であって、真正面から輸入規制は認めてない。ましてTPPになると、どんどん自由化をしなくてはならない。これは輸出国の輸出業者の利益になっても本来の目的である消費者の利益になっているかどうか。大きな疑問がある。

──この本では経済活動におけるいくつもの提言をしています。

 今の風潮に反するが、世界は公平でないといけない。そこで、私の提案は虚心坦懐にサミット構成国も単純なルールで参加国を決めるべきだと考えている。その基準にGDPは経済活動の成果だから入れざるをえない。それだけとはいかないので、人口ウエートを入れる。わかりやすくGDPのウエート半分、人口のウエート半分で決める。世界に200カ国あるとすれば、うち上位10カ国をG10としてメンバーにして、毎年入れ替えありとする。基準は数年前の統計となるかもしれないが。世界をどの国の誰がリードするかの大問題だから、選出手続きなどでの多少の煩雑さは我慢してやるべきだ。

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