魔法瓶サーモス、知られざる高収益の舞台裏 携帯マグボトルの市場創出、次なる挑戦は?
日本市場で急成長をたどり、多額の利益を稼ぎ出すまでになった大陽日酸のサーモス事業。ただし、この1、2年の急成長には特殊な事情があったのも事実。日本の消費者の間で飲料マグボトルがヒットしただけでなく、中国人の爆買い効果も大きかったからだ。
中国でも現地のサーモス事業会社が携帯飲料ボトルを販売しているが、安価な類似品と差別化するために、百貨店などに販路を限った高級品戦略をとっており、価格は日本の倍近い。このため、日本を訪れた中国人観光客が自分用やお土産用にとこぞって購入。しかも、一昨年から昨年にかけて、日本で大量に買い付けて中国で売る転売屋が続出した。
今年春以降は中国の税関審査が厳しくなったため、転売屋は姿を消し、その影響で足元の国内販売は前年をやや下回っているという。また、中国サーモスの価格見直しによって、日本との価格差も徐々に縮まっていく見通しで、今後は純粋なインバウンド需要も沈静化する可能性が高い。
卓上「スープジャー」で新市場を狙う
そこで日本のサーモスは、国内で新たな市場を創出しようと動き出している。今年9月、同社はユニークな新商品を発売した。商品名は「真空断熱テーブルスープジャー」(希望小売価格:税抜き6000円)。スープ類を保温したまま運ぶ携帯スープジャーはすでに商品化して女性たちから人気を集めているが、今回発売したのは家の中で使う調理用品だ。
深底のステレンレス製魔法びんの容器に具材や調味料、沸騰したお湯を入れてふたをしておくと、余熱で具材に自然と火が通る。簡単なスープなら10分以内に出来上がり、保温が効くので温め直す必要もない。慌ただしい早朝などに時間を有効に使いながら食事の準備ができる便利商品だ。
日本のサーモスがこれから力を入れていくのが、こうした“外に持ち出さない”商品分野だ。「当社はマグボトルやスープジャーなど、外に持って行く携帯型を中心に新しい商品を世に送り出してきた。今後は卓上やキッチンでも新たな生活スタイルを次々に提案したい」。サーモスの中條啓一郎社長はこう意気込む。
果たしてサーモスは、インバウンド需要が沈静化した後も日本市場で成長を維持できるのか。その答えは、家の中で新たな市場をどこまで創出できるかにかかっている。
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