信越化学が「本当の世代交代」に近づいた日 金川会長の右腕、斉藤氏が新社長に昇格
半導体シリコンウエハと塩化ビニル樹脂の世界最大手メーカー、信越化学工業が新社長人事を発表した。2010年から社長を務めてきた森俊三氏(78歳)が6月の株主総会後に相談役へ退き、副社長の斉藤恭彦氏(60歳)が後任社長に就く。カリスマ経営者として知られる金川千尋氏(90歳)は会長職を続投する。
社長交代の会見で森社長は、健康上の問題でみずから辞任を申し出たと説明。後任となる斉藤氏については、「今後もさらなるグローバル展開を推し進めていく中で、斉藤さんは海外経験が長く、年齢的にも適任。取締役会は全員一致で(人選が)決まった」と語った。
斉藤氏は12名いる社内取締役の中で3番目に若いが、塩ビ事業の中核を担う米シンテック社の現地トップを任され、次期社長候補の大本命と目されていた人物だ。本社経理部に配属されていた20代の時に、当時まだ設立から10年目のシンテックへ出向。以来、30年以上に渡って現地に駐在し、米国の塩ビ事業に関わり続けてきた。
絶対的なトップは依然として金川氏
信越化学は、金川会長のトップダウン経営によって、日本の化学業界を代表する高収益企業に飛躍を遂げた会社として有名だ。
1990年から20年間にわたって社長を務めた金川氏は、半導体ウエハ、塩ビでの積極果敢な投資で事業を拡大。2010年に社長職を森氏に譲ったが、90歳を迎えた今もなお代表権を持つ会長として、絶対的な経営トップに君臨し続けている。その金川会長が厚い信頼を寄せるのが、30歳も歳の離れた斉藤氏である。
斉藤氏が陣頭指揮を執るシンテック社は、1970年代に海外事業本部長だった金川氏が中心となり、最大市場の北米で立ち上げた塩ビ製造会社。相次ぐ能力増強で世界最大手メーカーへと成長、前2015年度も1社で400億円近い経常利益を稼ぎ出した。金川会長にとって、自身が手塩にかけて育て上げた同社は「わが子のような(愛しい)存在」で、斉藤氏は右腕としてその成長を支えてきた。
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