信越化学が「本当の世代交代」に近づいた日 金川会長の右腕、斉藤氏が新社長に昇格

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社長人事の発表があった4月26日、両者の関係が垣間見られるような場面があった。社長交代会見の1時間後に開かれた機関投資家・アナリスト向けの決算説明会。150人以上が集まるこの業績説明会では、金川会長が毎回出席し、シンテックに関する質問に自らコメントするのがお決まりだ。

この日も米国の塩ビ事業に関連する質問が出ると、まずは金川会長がマイクを握り、基本的な価格戦略について持論を披露。「シンテックは米国で2位、3位の塩ビメーカーを足したよりも大きい。もう断トツですね。毎年、信越化学の業績に大きく貢献しています」とスピーチを締め括ると、続いて現地トップの斉藤氏が最新の販売状況を詳しく解説した。

2018年が会長引退の節目か

金川氏は信越化学を超高収益業に育てたカリスマ経営者。90歳を迎えた今も会長として、グループのトップに立つ(写真は2008年、梅谷秀司撮影)

会長が愛して止まないシンテックでは現在、14億ドルもの巨費を投じるプロジェクトが進行している。塩ビの主原料であるエチレン生産設備の建設だ。安価なシェールガスを使ったエチレン段階からの一貫生産体制が整えば、コスト競争力はより高まる。完成は2018年半ばを予定する。

金川会長にとって、米塩ビ事業におけるエチレンからの一貫生産は大きな悲願であり、長年の夢だった。関係者らによると、会長は「シンテックのエチレン工場が動くまでは何としても見届ける」と以前から周囲に話しており、それまで続投する意欲が満々だという。

その“夢”の実現まであと2年。年齢を考えると、米国でのエチレン生産設備の稼働は、経営者としての金川会長の集大成になると同時に、真の意味で信越化学の経営トップが世代交代する大きな節目になるだろう。

「金川会長の下、引き続き会社の発展に努める。当社は安定した収益性で評価されているので、それを維持し、向上させるのが私の任務だと認識している」ーー

交代会見でこうあいさつした斉藤氏。カリスマ経営者の後を継ぎ、名実ともにトップとなったとき、本当の手腕が問われることになる。

渡辺 清治 東洋経済 記者
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