旭化成、好決算に潜む「杭打ち問題」の十字架 横浜マンションの賠償損失は来期以降に計上
子会社・旭化成建材の杭打ち工事データ偽装問題で揺れる、化学品大手の旭化成。2月4日に発表した2015年度第3四半期累計(4~12月)業績は、一連の騒動にも関わらず、むしろ好調といえる内容だった。
本業の儲けを示す営業利益は1266億円と前年同期よりも7%増え、第3四半期までの累計としては過去最高を更新。米国の電池絶縁材メーカー買収に伴うのれん償却負担で電子関連部門の利益がほぼ半減したが、円安や原料安の追い風もあり、化学、繊維部門などの採算が改善。住宅関連や医薬・医療部門の収益も堅調だった。
同社をめぐっては、横浜市内のマンションが傾いた問題をきっかけとして、2次下請けとして杭打ち工事を担当した旭化成建材による工事データ偽装が昨年秋に発覚。その後の調査により、旭化成建材が過去に杭打ち工事を手掛けた物件のうち、360件で同様のデータ偽装が行われていたことも判明。該当物件の安全確認調査が現在も続いている。
そうした中で発表された、今回の第3四半期決算。多くの報道陣が発表会見に詰めかけたが、データ偽装問題が第3四半期決算に与えた影響度は、拍子抜けするほど軽微だった。
杭打ちを含む建材部門は増益だった
杭打ち事業自体は一連の騒動で業務に重大な支障が出たものの、この事業の売上高はもともと年間150億円程度で、グループ全体への利益貢献は小さい。同事業を含む建材部門全体では、付加価値の高い高性能断熱材の販売が好調だったほか、製品の原料コストも下がったため、部門利益は前年同期の35億円から52億円へと増えた。
旭化成は第3四半期(2015年10〜12月)に杭工事関連損失として13億円の特別損失を計上。過去に手掛けた杭打ち工事のデータ再調査のほか、データ偽装があった360件の安全確認費用が特損の中身だ。
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