旭化成、好決算に潜む「杭打ち問題」の十字架 横浜マンションの賠償損失は来期以降に計上
まだ数十件の安全確認調査が続いているため、第4四半期(2016年1〜3月)にも追加で7億円程度の関連特損を見込んでいる。それでも純利益(2015年度の年間見通しは900億円)への影響は小さい。
今回の不祥事が本当の意味で業績に影響するのは、むしろ来年度以降だ。まず第一に、騒動の発端となった横浜市内のマンションをめぐる賠償問題がある。
このマンションを販売した三井不動産レジデンシャルは、傾いた棟以外も含む全4棟の無償建て替えを住民側に提案。建て替え工事期間中の仮住まいの費用なども同社が支払う和解案で、三井不動産レジデンシャルには巨額の費用負担が生じる。。
元請けの三井住友建設が主張するように、傾きの原因が杭工事の欠陥にあるとすれば、旭化成建材が三井不動産レジデンシャルから多額の費用負担を求められるのは必至。三井住友建設が昨年行った基礎杭の状況調査は簡易的なものだったため、横浜市の要請で本格的な再調査が始まっている。5月までに最終的な調査結果が判明する予定で、その結果によっては、旭化成建材が負う賠償負担は相当な金額になろう。
問題発覚以降は住宅受注が2ケタ減
もう1つの問題が、住宅事業への悪影響だ。旭化成は傘下の旭化成ホームズなどを通じて、戸建て注文住宅「ヘーベルハウス」、集合住宅「ヘーベルメゾン」の設計・建築請負を柱とする住宅事業を展開。グループで化学品、繊維から電子部品・材料、医薬品系まで幅広い事業を手掛ける旭化成にあって、住宅事業は連結営業利益の3割以上を稼ぎ出す最大の収益柱でもある。
高水準の受注残に支えられ、住宅事業は第3四半期までの累計で、売上高が4024億円(前年同期比6%増)、営業利益も399億円(同3%増)と、増収増益だった。ただし、杭打ち工事に絡む問題が発覚した昨年10月後半以降、ブランドイメージの悪化や広告宣伝自粛などにより、戸建て、集合住宅とも新規受注が減少。11月、12月の請負受注金額はいずれも前年同月より16%落ち込んだ。
住宅は受注してから物件が完成して引き渡すまでタイムラグがあるため、「足元の受注減少は、2016度後半から2017年度の業績に影響する」(小堀秀毅・専務執行役員)。大きな収益事業だけに、新規受注への影響が長引けば、来年度以降の業績にボディーブローのように響いてくる。
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