旭化成建材の不正は決算書にも滲み出ていた 不祥事は「赤字脱出が至上命題」の時に起こる

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2センチメートル傾いている横浜市内の大型マンション。旭化成建材が手掛けた基礎工事での不正が発覚した(撮影:今井 康一)
上場企業に対し、毎年公開が義務付けられている決算書。一見、数字の羅列に見えるその中にこそ、記者発表やリリースからは見えてこない、企業の「本当の姿」が潜んでいる。
現在発売中の『会計士は見た!』(文藝春秋)では、公認会計士の前川修満氏が、ソニーや東芝、大塚家具など、話題の企業の決算書を読み解き、各社の「裏の顔」に迫っている。
企業からの情報発信が盛んになっている今の時代こそ、会社の実情がありのままに示されている決算書を読むことの意味は大きくなっている。そこで今回は、旭化成建材によるマンション傾斜事件について、前川氏がその舞台裏を決算書からわかりやすく解説する。

 

旭化成建材の杭打ち工事のデータ改ざん事件は、発覚後1カ月以上経った今でも、連日多くのメディアで報道されています。当初は、当該マンションの現場担当者による不適切な作業が原因である、と報じられていたものの、その後、同社が手がけた他の物件でも次々と偽装が見つかり、問題は全国に飛び火しています。

旭化成の連結決算書から分かったこととは?

事件が明らかになった後、すぐに旭化成の決算書を読んでみました。するとそこには、今回の不祥事の温床をなしたと思われる数字が、はっきりと示されていた のです。その時点で筆者は、今回の問題は、決して特殊な現場担当者の「暴走」などではなく、会社全体の問題であるのではないか、と見ていました。それはな ぜなのか、以下で詳しくご説明します。

旭化成建材の親会社、旭化成は、ケミカルやホームズなど、全部で8種類の事業を営んでいます。その中の1つに建材事業があるのですが、その中核を担っていたのが今回、問題が発覚した旭化成建材でした。

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