旭化成建材の不正は決算書にも滲み出ていた

不祥事は「赤字脱出が至上命題」の時に起こる

今回の事件では、旭化成建材の社員は、同僚からデータを引き継げなかったり、また記録用紙の紙切れに気付かなかったりしたところで、一部のデータを流用してしまった、とのことです。その背景には、このように目の前の採算性が重要視され、大切な倫理観が置き去りにされかねない状況があったことが、決算書から読み取れるのです。

実はこのような事例は、旭化成建材に限ったことではありません。

阪急阪神ホテルの不正も赤字脱却時に起きた

記憶に新しいところでは、2013年10月に、阪急阪神ホテルズの複数のホテルおいて、料理の食材の虚偽表示があったことが発覚しました。

これらのホテルにおいては、例えば「ビーフステーキ」と表示されていたものが、実際は牛の脂を注入したものであったり、「芝海老」のかわりに「バナメイ海老」が使用されていたりしました。

この事件も、旭化成建材の場合と同様に、その直前の赤字経営が尾を引いていました。阪急阪神ホテルズは、阪急阪神ホールディングスのホテル事業を担っていますが、2010年度においてはホテル事業だけが、グループ内で唯一、赤字を出していました。

そのホテル事業は2012年度からは黒字化しています。ここでも、旭化成建材と同様、売上高の増加がないにもかかわらず黒字化を果たしました。これは、旭化成建材と全く同じパターンです。

他にも、2014年に食品の産地偽装が発覚した木曽路でも、やはり旭化成や阪急阪神ホールディングスと同様、売り上げが伸びない中で黒字転換を果たしています。

このように、企業の不祥事の裏には、赤字経営からなんとか脱却しようとするがあまり、絶対に削ってはいけない材料費や省いてはいけない作業が、「顧客にバレなければ大丈夫」という考えのもとに「合理化」されてしまう、という構造があるのです。

今回のマンションが販売されていたとき、そのパンフレットには安心・安全を謳う文句が多々載っていたといいます。しかし、当時の決算書からは、そうした「表の顔」からは窺い知ることのできない、厳しい懐事情と「不祥事の温床をなす数字」がはっきりと示されていたのです。

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