大手化学メーカー、自動車用途の強化に走る 車体の軽量化ニーズに大きな商機
5月下旬に横浜で開催された「人と車のテクノロジー展」。期間中に9万人近い自動車業界関係者らが訪れた会場で、自動車部品メーカーなどに混じって、大きなブースを構えていたのが大手化学メーカーだった。各社は汎用の石油化学から付加価値が高いスペシャリティケミカル(機能性化学)へのシフトを進めており、中でも自動車関連を共通して重点強化分野に位置付けている。
「世界を見渡しても、これだけ多くの素材を提供できる化学メーカーはほかにない。グループの総合力を活かして、自動車ビジネスをさらに大きく伸ばしていきたい」。同展示会場のブース横でそう語ったのは、三菱ケミカルホールディングスの石渡直明・自動車関連事業推進センター長だ。
三菱ケミカルは幅広い商材を一括で売り込み
三菱系の素材3社(三菱化学、三菱樹脂、三菱レイヨン)が経営統合した同グループは、幅広い素材・材料技術を有するいわば“化学業界の百貨店”。自動車関連だけを見ても、汎用樹脂やPPコンパウンド、エンジニアリングプラスチック(エンプラ)、アクリル樹脂、ガラス繊維強化マット、炭素繊維複合材、リチウムイオン電池材料など、その事業領域は多岐に渡る。
石渡氏が率いる推進センターは、三菱ケミカルHDが自動車関連ビジネスを伸ばすために立ち上げた戦略的なマーケティング部隊だ。中核3社とその傘下企業で合計46にも及ぶ関連事業部の取りまとめ役となり、グループの素材・材料を一括して売り込むべく、自動車メーカーや主要部品メーカーへの営業攻勢を強めている。
たとえば、トヨタが昨年末に発売し、国内で販売台数トップを独走する最新型プリウス。その燃料タンクは、内外層の高密度ポリエチレン、ガスバリア層のエチレンビニルアルコール樹脂、さらには接着層の変性PEに至るまで、三菱がすべての材料を任された。直近の自動車関連売上高は年間3200億円で、2020年までに4500億円を目指すという。
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