帝人が米自動車関連企業に大金を投じる理由 激化する一方の「素材戦争」で打った布石
合成繊維大手の帝人が9月13日、自動車向け複合材料成形メーカーである、米コンチネンタル・ストラクチュラル・プラスチックス(CSP)社を買収することを決めた。買収金額は8億2500億ドル(約825億円)。プライベートエクイティ2社などから全株式を譲り受ける。
帝人のM&Aとしては、2000年にオランダメーカーからトワロン事業を買収して以来の規模であり、過去最大の金額だ。記者会見した鈴木純社長は「(ガラス繊維の扱いに長けたコンチネンタルと組むことで)ガラス繊維と炭素繊維のハイブリッドなどが可能になる。今後もM&Aはためらわない」と述べた。
2016年度までの修正中期計画の中で、帝人は、素材、ヘルスケア、ITの主要3領域の強化と事業間の融合を掲げている。成長戦略投資として2015年~2016年度累計で1000億円を充てることを計画していた。これまで、人工関節事業の合弁事業(帝人ナカシマメディカル)などの案件は出ていたが、小粒なものが中心であり、現行の中計では初めての大型案件となる。
追い風となった自動車の環境規制
帝人にとってコンチネンタルを買う最大の意義は、鈴木社長が言うように、炭素繊維だけでなく、ガラス繊維やアルミニウム、ハイテンション鋼など、使いやすい素材を使いやすい形で自動車メーカー向けに提供できるようになることだ。いわば狙いは、マルチマテリアルの供給メーカーになること。背景には、素材間競争が今後本格化していく、との認識がある。
自動車市場をめぐる大きなトレンドの一つとして、各国の環境規制が今後一層強化されていくことは間違いない。具体的にはCO2の排出量や燃費の規制が強化される。自動車メーカーとしては環境負荷を低減するため、車体を軽量化し、電気や水素など新たな駆動源を追求している。製造プロセスのコストを削減し、コストダウンを図る必要もある。
そうした際に注目されるのが、炭素繊維複合材料(CFRP)やガラス繊維複合材料(GFRP)の活用だ。これらを活用することによって、車体部品を軽量化したり、部品点数を削減したり、さらにはリサイクル性を向上させたりすることができる。帝人はコンチネンタルを買収することで、炭素繊維複合材料だけでなく、ガラス繊維複合材料を合わせた両方を、自動車メーカーに提供できる地歩を築くことができた。
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