三菱ケミカルのお手本は「スリーエム」だった 日本最大の化学会社トップが語る成長戦略

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会社の基本戦略として、技術力で勝負できる機能製品(加工度が高く、優れた機能性を有する素材・材料)を徹底的に強化する。炭素繊維複合材や機能性樹脂などの自動車向け軽量部材を始め、電子・ディスプレー材料、高機能フィルム、電池材料、水処理システム、人工関節を中心とする医療関連部材などが戦略重点分野だ。機能製品群はすでに営業利益の過半を稼ぐまでになっているが、ここをもっと太い柱に育てていく。

お手本は米国のスリーエム

ーー新会社はどんな化学メーカーを目指すのですか。

一言で表現するなら、独自性に富んだ多様な高機能製品を数多く有する会社だ。欧米の巨大な化学企業も高機能化学品に力を入れているが、その中身は塗料用途など非常にボリュームの大きな製品が中心。それに対して、われわれが展開している高機能製品はある意味、ニッチとも言える。

三菱ケミカルの炭素繊維複合材は、トヨタの新型プリウスPHVのバックドア骨格材に採用された。今後は自動車での採用本格化が期待される。(記者撮影)

たとえば、旧レイヨンが手掛けてきた炭素繊維複合材にしても、規格品として提供しているものはごく一部。大半は顧客企業が成形・加工しやすいよう、お客さんの要望に合わせて樹脂の配合を変えるなど仕様を作り込んでいる。売り上げ規模がもっと大きな高機能フィルムでも同じで、顧客ごとにカスタマイズしたニッチ製品の集合体だ。

でも、それでいいんですよ。ニッチだからこそ付加価値がつくわけで、そこが私たちの生きていく世界なんだと思う。そうした付加価値の高いニッチな機能製品を数多く持つことが、競争力と高い収益力につながる。

一つのお手本になる企業が、米国の3M(スリーエム)社。材料やプロセスなど46種類の基盤技術を絶えずブラッシュアップしながら、それらを最大限に活用し、5万点以上もの製品を展開している。私は好きだね、そういう会社が。われわれも統合会社に持ち寄った技術をうまく組み合わせながら、機能性に優れたソリューション型の独自製品を効率よく生み出していきたい。

ーー統合新会社は現状44%の海外売上高比率を4年内に50%まで引き上げる目標を立てています。

海外での販売拡大は新会社の大きな課題だ。そのための施策として、重要度が高い北米や欧州、中国、東南アジアには、マーケティング機能などを担う地域統括会社を設立した。現場の社員は自分の担当製品を売ることに必死で、他部門との情報共有がどうしても限られる。そこで地域統括会社が顧客動向などの重要情報を集め、ある事業のお客さんを別の事業に紹介するなどして、商売のマッチングをする。

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