三菱ケミカルのお手本は「スリーエム」だった 日本最大の化学会社トップが語る成長戦略

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統括会社はスタッフが自分たちの足で情報をかき集め、地域のニーズを詳細に分析して、そこでの最適な全体戦略も練る。それぞれの事業を統括するのは日本の事業本部だが、日本で考える海外のニーズと現実がずれている可能性だってある。統括会社のマーケティング部隊と事業本部がすり合わせすることで、各地域の実情にあった適切な事業戦略が立案できる。

規模追求から収益性の向上に軸足

ーー小林喜光・前HD社長(現会長)は規模拡大の必要性を唱え、社長在任中に三菱レイヨンや大陽日酸の大型買収を実行しました。越智さんの社長時代にも大型買収はあるのでしょうか。

欧米化学企業と伍して戦うためには一定の規模が必要との判断から、小林前社長時代に三菱レイヨン、大陽日酸との経営統合を始め、積極的なM&Aを行ってきた。勝ち残るために必要な規模は手に入れたので、今後は事業の成長による収益性の向上に注力したい。

高機能フィルムも新会社の戦略製品の一つ。バリア性や耐熱性など、異なる機能の樹脂を何層にも重ねた多層フィルム技術に強みを有する。(写真:三菱ケミカル)

M&Aに関して言えば、個々の事業が成長を目指す中で、販売チャネルや技術など、足りないパーツを補うための案件が中心になっていくと思う。もちろん、大型のM&Aを否定するわけではなく、ある事業の戦略を考えた場合に必要なら選択肢として検討する。

ーー伝統的な石油化学部門の今後は?

石油化学の汎用品は中国勢の台頭が著しいし、どうしてもコスト競争力で勝負が決まってしまう。需給で市況が大きく振れるアジア市場への輸出で安定的な利益を出していくのは難しいため、基本的に国内に戦線を限定した形で事業を展開していく。

最大の懸案だったテレフタル酸(=ポリエステル繊維原料)も昨年度にインド、中国の生産子会社を売却し、これで石油化学の大きな構造改革は一通り終わった。ただ、点数をつけるとまだ80点。もっと収益性を上げないと。ここは典型的な汎用品の世界だが、それでもポリエチレンやポリプロピレンに新機能を付与するなど、付加価値を高めるためにやるべきことはまだある。

ーー国内最大手として、日本の総合化学メーカーの将来をどう見ますか。

汎用品での中国勢の台頭に加え、2018年以降は米国から安価なシェール(ガス・オイル)由来の基礎化学品がアジアに流入してくる。じゃあ、日本の総合化学メーカーはどうするんだと。

われわれの武器はやはり技術力。勝ち残るためにも技術を駆使して、日本の化学メーカーならではの優れた機能製品を数多く育てていくことが必要だ。三菱ケミカルとしてもそれは同様で、今回の合併で旧3社の力を結集し、高機能製品分野で圧倒的な競争力を持った会社にしたい。

渡辺 清治 東洋経済 記者
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