旭化成、「心肺蘇生事業」が急成長した舞台裏 買収から5年、高値づかみの評価をくつがえす

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米国では突然の心停止発症患者が年間50万人以上に及ぶ。米ゾール社の製品はそうした患者の救命活動に欠かせない(写真:旭化成)

石油化学や繊維、住宅、電子部品など多様な事業を展開する旭化成にあって、ある意外な事業が急成長し、存在感を増している。“心臓突然死”の危機に見舞われた患者を救う救命救急の医療機器事業だ。

事業を担うのは2012年春に買収した米国のゾール・メディカル社。昨2016年度の同社の業績は売上高が12.7億ドル(約1380億円)、営業利益は2.6億ドル(285億円)といずれも連続して過去最高を更新した模様。旭化成の子会社になってからの5年間で、売上高は倍以上に増え、営業利益も3倍以上へと拡大した。

病院・救急隊向けで全米の最大手

心臓突然死とは、心臓の働きが突然機能停止し、発症後24時間以内に死に至ること。病名としては心筋梗塞や急性心不全などに分類されるが、その多くは不整脈による心室細動(心室のけいれん)に起因する。

特に米国人の発症率が高いとされ、米国心臓協会の統計によると、米国内での発症者は年間55万人に及ぶ。発症者の命を救うには、すぐに心臓マッサージ(胸骨圧迫)を施したり、必要に応じて除細動器で電気ショックを与えて心臓のリズムを正常に戻す、といった迅速な応急処置が必要になる。

ゾール社はこうした心肺蘇生領域を専門とする医療機器メーカーだ。「除細動器」や「自動心臓マッサージ器」、心停止などで緊急搬送された患者の体温を適正状態に保つ「体温管理システム」などが主力製品で、病院・救急隊向けの心肺蘇生関連機器では全米でトップシェアを有している。

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